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OCS『The Blitzkrieg Legend』で見るフランス電撃戦中のドイツ国防軍部隊による市民虐殺

 先日来読み進めている『ダンケルク』から、ベルギー軍のことについて『大いなる聖戦』:なぜ1940年のフランス軍は弱かったのか?(付:ベルギー軍は頑張ったのか?) (2019/06/16) に加筆したのですが、同書にはベルギー軍とドイツ軍との戦いの渦中でドイツ国防軍の部隊がベルギー市民を虐殺した事件についてある程度以上書かれていて、「おおお……」となりました。

 同書には同時期のSS(親衛隊)による市民の虐殺についても書かれているのですが、それらについてエントリを書く前に、この件についてまとめてみたいと思います。

 こうした【親衛隊の】特定の残虐行為について、ドイツ陸軍に責任を押しつけることはできない(ナチス親衛隊はナチ党が責任を持つ組織だったため)が、ドイツ国防軍(陸海空の三軍を合わせた軍)も少なくとも一度はヘント近くのフィンクト村で虐殺をおこなっている。5月26日から28日にかけて、第337歩兵連隊が最大100名の民間人を殺害したのだ。うち何名か(なかには89歳の男性もいた)は家族や友人が見ている眼のまえで射殺された。ほかの者たちは、ドイツ人が橋を渡る際に人間の盾として利用され、そのあと無作為に処刑された。この時点ではベルギー陸軍は降伏していたというのに、自身の墓穴を掘らされてから射殺された者もいた。
『ダンケルク』P266,7



 調べてみると、この事件は「フィンクトの虐殺(Vinkt massacre)」と呼ばれ(→英語版Wikipedia「Vinkt massacre」)、フィンクトの村は現在のダインゼ(Deinze)の町の一部(町の北西地区)だそうですが、OCS『The Blitzkrieg Legend』にはDeinzeの町(ゲームでは村扱い)が描かれています。


 ↓OCS『The Blitzkrieg Legend』の「ダイナモ作戦」シナリオセットアップの一部

unit9976.jpg

 画像右上の方にヘント(Gent)があり、その左下3ヘクスのところにダインゼ(Deinze)があります。


 背景としてこのダインゼのある運河にかかる橋を、ベルギー軍の第1アルデンヌ猟兵師団(という名称だが?実質は連隊規模で、戦車、オートバイ、自転車兵で構成されていたようです)が爆破せずに守ることを決断し、しかもこの部隊がベルギー軍の中でも非常に士気の高い部隊であったということがあるようです(前掲Wikipediaによる)。

 ↓OCS『The Blitzkrieg Legend』における同ユニット

unit9974.jpg

 連隊規模で、この兵科マークは自転車兵なのですが、『Fall Gelb 1940 (2): Airborne Assault on the Low Countries』のマップではオートバイ兵の兵科マークで描かれています。

 そこに、ドイツ軍の第225歩兵師団がやってきまして……前述の「第337歩兵連隊」というのはこの師団を構成する連隊のうちの1つです。


 ↓OCS『The Blitzkrieg Legend』のドイツ軍第225歩兵師団。

unit9975.jpg


 虐殺の細かい経過なんですが、英語版Wikipediaだけでなくドイツ語版Wikipedia「Massaker von Vinkt」も参照してGoogle翻訳で見てみたところ、英語版とあまりにも内容に差異があってどうしたらいいか分からなくなりました。とりあえず興味のある方は、両方をGoogle翻訳でかけてみれば、大まかなことは読み取れると思います。

 ただ、英語版Wikipediaの方では、ドイツ軍第225歩兵師団が、訓練度の低い部隊であったために橋を戦闘で取ることができず、ために一般市民を人間の盾として使用したかのように受け取れる記述があったり、あるいはドイツ語版Wikipediaの方では、教会に集められていた人質がある時爆発によって多数死亡したのだけどもその爆発はベルギー軍側の砲撃によるものだと推定されると書いてあったりしたのが興味深かったのですのが、しかしこれはどちらも、相手側をあしざまに言うバイアスの賜なのかもしれません……。


 他の手持ちのフランス戦の資料でこの虐殺について書かれてないかと思い、洋書資料だと必ずある索引で「Vinkt」を引いてみたのですが、手持ちの洋書資料4冊の中には1冊もありませんでした。

 で、最後に邦訳の、索引のない『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』を目視検索で見ていっていたら、記述を見つけました。しかも非常に分析的で偏りのなさげな、感嘆すべき記述であると感じました(もちろん、素人目の感想です(^_^;)。

 ソンムの例に顕著だが(479ページ)、他にも6月の終盤戦におけるヴォージュなど、 各地でドイツ軍は捕虜に対して、とりわけ彼らが黒人兵である場合には容赦なく残虐行為を加え、多くを射殺した。いずれもこれらは、例えば「ダムダム弾【日本語版Wikipedia「ダムダム弾禁止宣言」】を使用したから(ル·パラディのケースで、 SS“トーテン・コップフ”が軍事法廷で判決を下した)」とか、「白旗を掲げたのに攻撃を加えた」などともっともらしい理由を付けて正当化している。戦友の処刑遺体などが発見された結果として明るみに出る事件だが、事実関係は失われているので、今日では追求することは不可能だ。また、市民が犠牲となったケースもかなり確認できる。ル·パラディ事件の数日前にSS“トーテン・コップフ”はアラス地区において、非道な振る舞いにおいては他の追随を許さない実績を残していた。5月23日にボン=デ=ギイのエルマン農場にて市民23名を射殺(354ページ)したのをはじめ、オービニー周辺で98名以上、ヴァンデリクールでは45名を処刑していた。全員が無実の市民であるが、SS側では少なくとも一度は農民から射撃されたと主張していた。SSが乱暴な対処を得意としていることに疑いはないが、ドイツ陸軍も無関係は装えない。例えば5月27日にベルギーのフィンクトが陥落したおりに、第225歩兵師団の軍事裁判によって、86名の市民が処刑された。当然、このような事件でドイツ国防軍の評判が傷つくとしても、忘れたり無視してよいというものではない。しかし、連合軍も捕虜虐待という点では、実は大差がない。戦争被害者側が、のちに打倒した敵が行なった戦時中の犯罪行為を言い立てる一方で、自らの振る舞いを忘れてしまおうとするのは、 無理もないことだろう。仏英連合軍がドイツ人捕虜を殺害した例も多数目撃されている。戦後、ドイツ軍の捜査機関は自軍捕虜に対する残虐行為を調査し、地元民も関係していることが発覚すると、彼らを提訴した。有罪判決に至る連合軍側の典型的な犯罪例としては、5月18日、アラスの北、 ヴィミに不時着したハインケルHe111の乗員に対する事件を挙げられるだろう。墜落機に殺到した仏英軍兵士と地元住民は、残骸から這いだしてきた4人の乗員を捕らえると、有無を言わさず射殺してしまったのである。兵士は去り、残骸は住民の略奪にあった。同月末に仲間の死体を発見したドイツ軍は、調査の末に関与した多数の住民を逮捕した。そして保有していた残骸が証拠となり、裁判の結果、3名が処刑されたのである。
『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』P440


 尤も、この記述でも、ドイツ軍の場合は「一般市民」を盾にしたり理由をつけて大量処刑したりしているのですが、英仏軍兵士と地元住民の場合は「ドイツ軍兵士捕虜」数名を射殺しているとあるので、個人的には軽重の度合いを感じてはしまいますが……どうなんでしょう。

 「黒人兵である場合には容赦なく残虐行為を加え、多くを射殺した。」の件ですが、この「黒人兵」というのはフランス軍の植民地兵、つまりアルジェリアやモロッコ出身の黒人兵のことだと思います。フランス軍にはかなりの割合でこのような兵士(というか、それらの兵士達による師団)があり、フランス戦ゲームならどのゲームでもそれが確認できます。ベルギーもコンゴというアフリカ植民地を持っていましたが、ベルギー軍に黒人兵がいたかどうか、私は知りません。イギリス軍には、本当にほんの少しだけ黒人兵がいたらしいです(『ダンケルク』P112による)。


Bundesarchiv Bild 183-L05109, Kriegsgefangene französische Kolonialsoldaten

 ↑1940年のフランス戦におけるフランス軍黒人兵(Wikipeidaから)



 ↓OCS『The Blitzkrieg Legend』のフランス軍植民地兵師団

unit9973.jpg

 「Afr」は「アフリカ」、「Mor」は「モロッコ」、「NA」は「北アフリカ」、「Col」は「植民地」を意味しています。

 
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DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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