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『大いなる聖戦』が指摘する通説の間違い(バルバロッサ作戦と真珠湾)

 『大いなる聖戦』ですが、この本が指摘する「通説の間違い」について書いておこうと思います。

 細かく見ればもっといっぱい書いてあったとも思うのですが、とりあえず2つだけ。まずはバルバロッサ作戦が遅れた理由について。

 ギリシャとユーゴスラヴィアでの戦いにおける独軍の死傷者は5100名余りに上っているが、西側連合国で長年受け入れられてきた通念的見解によれば、ドイツがこの戦いで払った真の意味での代償は、対ソ戦のための予定表が狂わされ、その準備にも影響したこととなっており、とりわけ英国においてはその見方が強い。だが、この見方は正鵠を射たものではなく、バルバロッサ作戦の開始が遅れた理由は、バルカン情勢よりは1941年春の豪雨に帰せられる。もっとも、独空軍がパルカン地域で220機を失い、同地域に投入された第11装甲師団と第9師団が対ソ戦の初動段階で戦列に加わることができなかったのも事実である。
『大いなる聖戦 上』P248


 うーん、全然聞いたことない指摘です(^_^; ネット上で同じ様な話が見つかるかなと思って探してみたのですが、ぱっとは見つかりませんでした……。


 もう一つは真珠湾攻撃の第三次攻撃について。

 さらにそれよりも重要なこととして指摘し得るのは、基地や石油貯蔵施設が同様に攻撃対象から外されたことである。それらの施設に対しては日本軍が攻撃を反復していば破壊し得たという主張もあるが、艦隊に随伴していた駆逐艦の燃料補給の必要で第三次攻撃をかけることができなかったことや、そのような目標を爆撃するための大型爆弾を欠いていたこと、そして次の作戦行動の準備に入るために空母機動部隊が撤収する必要があったことなどに鑑みれば、真珠湾攻撃とは12月8日の一日限定の単発攻撃以外にはなり得なかったというのが実情である。*

*第三次攻撃の可否を含む真珠湾攻撃をめぐる論議についてはH. P. Willmott with Haruo Tohmatsu and Spencer Johnson, Pearl Harbor (London: Cassell, 2001)に詳しい。
 駆逐艦の積載燃料再給油に要する時間、損傷機の数と種類、再攻撃に使用できる機種と機数を考慮すると、第三次攻撃を行わなかった南雲長官の判断は合理的であった。しかし、「第三次攻撃が可能であったのに南雲が判断を誤って行わなかった」という俗説がゴードン・W・プランゲ『トラトラトラ』(初版は日本リーダーズダイジェスト、1966年、新装版は並木書房、2001年)やそれに基づく映画「トラ・トラ・トラ!」(20世紀フォックス、1970年)によって広まり、今なお影響力を持っている。
『大いなる聖戦 上』P324,5


 これは個人的にもなかなか興味深い話だと思いました。「俗説が広まって……」というのは世の中に結構おおくあると思います。「大陸軍 その虚像と実像」のR/Dさんが良く書いておられましたが、「面白いミーム(文化的遺伝子)の方が、それほど面白くもない真実を駆逐して広まってしまう」というやつでしょう。

 例えば、シュリーフェンプランを小モルトケが改悪したという話にしても、昨今では「大モルトケの元々のシュリーフェンプランの方がダメダメな代物だったのを小モルトケが改善した」という説になりつつある……? でもだいぶ以前、古代ローマの史書だったか碑文だったかの史実性に関する見方の変遷について書いた文章を読んだことがあったのですが、それによると「最初はそれが正しいと考えられていた」→「それに対する批判的見方が起こって、ほとんど信頼できないとみられるようになった」→「その批判に対する批判として、それら史書や碑文はある程度狭いコミュニティの中で残されてきたもので、嘘はすぐばれるものであったのだから、ある程度以上信用できると思われるようになった」というように、二転三転したりすることがある、と。だから私は、「絶対的にこうなんだ!」というような書き方は、どの時点にしろ、あまり好みではないですね……。


 あと、通説の間違い的な話で言えば、「エル・アラメインの戦いの後、モントゴメリーの追撃が遅すぎたせいでロンメルをむざむざ逃がした」という通説に対して、「あれはやむを得ない事情があったのだ」という話をここ半年内くらいにどこかで見たような気がするのですが、『大いなる聖戦』の中にはなく、どこで見たのかもやもやします(^_^;

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 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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