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1940年の西方電撃戦で、なぜオランダを占領すべきだったのか?(付:OCS『Beyond the Rhine』)

 現在尼崎会(拙宅)にて、1940年の西方電撃戦を扱ったOCS『The Blitzkrieg Legend』をプレイしており、色々な話題が出るわけですがその中で「オランダを降伏させるとVP1点だが、オランダなど攻略せずにその分の戦力を南方に回した方がいいのではないか」という話が出ました。

 オランダ攻略用の戦力としては歩兵師団を除いても第9装甲師団、SS特務師団、第7降下猟兵師団、第22空輸師団などの複数ユニットフォーメーションがあり、また航空ユニットや特殊作戦マーカー、それにもちろんSPも消費しますから、それらをより南方に回せるならば確かに有用な気がします。それに対して「じゃあオランダ軍が南方にシフトできるのでは」という意見も出ましたが、オランダ軍は非常に弱体であり、SPも非常に少ないことから、大したことはできなさそうな……(史実で政治的にそんなことはあり得ないだろうということももちろんありますが)。

 第一次世界大戦の時にはシュリーフェンプランでドイツ軍はベルギーを通ってフランスに攻め込みましたが、オランダは攻めておらず、第二次世界大戦の時にはベルギーへの攻撃は(主攻勢軸であるアルデンヌ方面から目を逸らす)陽動としての意味がありましたが、なぜオランダまで攻略しなければならなかったのか、私は分かってませんでした。


 そこらへん気になったので、各種資料で調べてみました。それらの資料についてのエントリはこちら↓

『FALL GELB 1940(2)』
 ……OCS『The Blitzkrieg Legend』キャンペーン(オランダ抜き)第3ターン後攻 (2018/11/11)

『電撃戦という幻』
 ……『The Blitzkrieg Legend』来ました (2012/11/11)

『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』
 ……『英辞郎第7版』『西方電撃戦』発売! (2013/03/12)
    『西方電撃戦』の写真をグーグルストリートビューで探してみました (2013/03/30)



 まず見たのは、オランダ・ベルギーでの戦いのみを扱ったオスプレイの『FALL GELB 1940(2)』だったのですが、本文の2ページ目にずばり書いてありました。

 【侵攻計画で】オランダ領を占領しないことになっているのに不安を抱いたドイツ空軍参謀長のハンス・イェションネクは10月30日にヒトラーに会い、こう異議を唱えた。「もしオランダ領を占領しなければ、イギリスがオランダの航空基地を手に入れることになるでしょう。」 当初ヒトラーは心を動かされなかったが12日後にイェションネクが再び抗議して言った。「オランダは占領されるべきです。なぜなら、イギリスがオランダの航空上の主権を奪うことになるでしょうし、そうなれば我々はルール地方を守ることができません。」 イギリスがその影響圏内にヨーロッパの小さな中立国を無理やり組み込むことによって自身の主導権に先手を打たれるかもしれないと常々恐れていたヒトラーは、OKW(国防軍最高司令部)総長【カイテル】に命じてOKH(陸軍総司令部)へ黄色作戦の計画の中にオランダ征服を含めるよう指示させた。当初は第18軍の中の第10軍団の3個師団のみが割り当てられたが、1月に黄色作戦が改訂されキュヒラー将軍の第18軍全体がオランダの攻略任務に向けられることとなった。
『FALL GELB 1940(2)』P5,6



 他の資料でも探してみたところ、そのものずばりというのはなかったのですが、傍証になるようなものがありました。

 【以下、10月9日の総統指令第6号に明記】攻勢作戦の目的は、まずフランスとその同盟諸国の予想される野戦軍主力部隊を撃滅すること、同時にオランダ、ベルギー、北フランスのできるだけ広大な地域を制圧し、海空による対英戦争指導を有利に進めるための基盤、ならびに最重要のルール工業地帯を守るための広い前哨地域を確保することにある。
『電撃戦という幻 上』P122(『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』P52にも同様の記述あり)

 ヒトラーは、10月29日の作戦命令……【で】……オランダが連合軍の陸空軍を受け入れる事態を恐れた結論として、オランダに全面侵攻することになったのだ。
『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』P53


 ただ、理由については合致しているのですが、日付の理屈が合わないのが良く分かりません(^_^;


 一方、連合軍側の事前の推測でも、オランダの少なくとも一部が侵攻されることは確実視されていたようです。

 前大戦開戦時の1914年には、ドイツ軍の作戦立案者はオランダ侵攻をその戦略に取り込んでいなかった。この決定はのちに、ドイツ攻勢軍の作戦機動の余地を狭める結果を生じたとして批判の対象となっていた。そのため、今回はベルギーとルクセンブルクだけでなく、オランダも侵攻の対象となることは間違いなく、どう割り引いても、ドイツとベルギーの間にあるオランダの“飛び地”領土であるマーストリヒトを中心とする一帯が奪われることは確実だった。
『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』P43



 これら、ドイツ軍側の「ルール地方を守るため」と連合軍側の「ドイツ攻勢作戦機動の余地を狭めないため」が、OCSの地図上でどうなっているか確認しようと思うのですが、前者の件が『The Blitzkrieg Legend』のマップではルール地方が含まれておらず確認できないので、『Beyond the Rhine』のマップで確認してみます(『The Blitzkrieg Legend』は1ヘクス3マイルですが、『Beyond the Rhine』は1ヘクス3.5マイルで、そこらへんの差異もありますが)。


unit00429.jpg

 紫色の線が国境で、ルール工業地帯の都市は(元々)黄色地のヘクスになっています。★印で示したのがマーストリヒトのヘクス。

 こうしてみると確かに、ドイツ軍がオランダに侵攻せず、オランダが中立であったとしても、イギリス陸空軍がオランダに進出したならば、ルール工業地帯は危ないという気がします。「イギリスが中立のオランダにどうやって軍を無理矢理進出させるのか?」という話もありますが、この西方電撃戦のわずか1ヶ月半前、英仏は中立のノルウェーのナルヴィク等に、ドイツ軍の機先を制して無理矢理上陸作戦を決行する手筈を決めたところを、それを察知したドイツ軍がさらに先んじて上陸する(ヴェーザー演習作戦)」ということがあったばかりでしたから、「あながちあり得ない」どころが「全然あり得る」という気もします。

 また、マーストリヒト突出部の存在も確かに重要で、『The Blitzkrieg Legend』で「ドイツ軍プレイヤーがオランダに侵攻しないでその分の戦力を他へ回す? まあそれでもいいけど、その場合はマーストリヒト突出部も当然通っちゃダメだよ」と、そんなルールはないですが政治的な状況を考えるとそういうハウスルールを作った方が良さそうなものの、その場合はドイツ軍はベルギーへの攻勢に四苦八苦することになりそうな気がします(^_^;

 第一次世界大戦の時はドイツ軍はオランダ領を侵犯せずにどうやってシュリーフェンプランを実行したのか不思議に思いましたが、調べてみると大モルトケは元々オランダ領も侵犯するつもりであったものを小モルトケがオランダ領は侵犯しないことに修正し、そして実際にオランダ領にギリギリ入らないところを進んだようです。んー、でも当時は移動コストが低い徒歩タイプの部隊しかいなかったわけですから、それで別に問題なかったということでしょうか。


 調べてみれば他にもオランダに侵攻した理由があるのかもですが、まあここらへんで……。ただ、OCSのプレイ的にはどうしたら良いか難しいところですね。マーストリヒト突出部に関するハウスルールは採用しても良いのかもですが、「将来的にルール工業地帯が危ないかもしれない!」という理由の方は、『The Blitzkrieg Legend』のプレイ中には関係ない(^_^; 例えばのハウスルールとして、オランダを攻略しなかった場合、その分のVPは0点ではなく、-1点だということにするとか……?


<2019/12/31追記>

 2019年12月から始めた3回目の『The Blitzkrieg Legend』キャンペーンプレイでも、オランダを降伏に持っていくのがドイツ軍にとって負担で、その方面へ振り向ける戦力を南方で使いたいという議論が収まらない面がありました。「どうせオランダを放っておいてもオランダ軍ユニット及びSPに攻勢能力などないのだから、最低限の守備部隊だけをオランダ方面に残して、オランダ方面に向けるはずだった部隊を南方に向けてしまえばいいのだ。」と。確かにゲーム的にはそれは可能(たぶん)なのですが、それを許容するとそれこそ「オランダ無視戦略」が『The Blitzkrieg Legend』におけるドイツ軍必勝法になってしまうのではないかという危惧も感じていました。

 それで、再びちょっと資料を漁ってみてましたら、次のような記述を見つけました。

 1914年の第一次世界大戦勃発時、ドイツ帝国軍はオランダ領へは一歩も踏み入らなかった。戦後、当時の参謀総長であったヘルムート・フォン・モルトケ上級大将は、ドイツ軍事界の批判の矢面に立たされた。批判の対象となったのは、参謀本部がマーストリヒト“虫垂部”と呼ばれるリムブルフ州を横切る攻撃を実施しなかったことで、ドイツ部隊はオランダ南部国境沿いに西へ向けて、密集して進まざるを得なかった不適際にあった。結果、オランダ侵攻の必要は戦訓として学び取られたが、《作戦名:黄色》の第1案で示された考えは、オランダ全土の侵攻ではなく、第6軍により“虫垂部”を攻撃するという限定されたものであった。しかし、オランダが仏英の地上・航空戦力を自国領内に招き入れるのではないかという危惧から、1940年1月30日に交付された《作戦名:黄色》第4案では、作戦をオランダ全土の侵攻へと拡大させることになった。
『西方電撃戦 フランス侵攻 1940』P107


 なるほど、虫垂部は通らなければならないが、虫垂部を通る「だけ」だと、オランダを連合軍側に付かせてしまい、そこに英仏軍が地上・航空部隊を置いて、短期的にも長期的にもドイツ本土やルール地方や、あるいは攻勢の根元が危険にさらされるから、オランダを降伏させねばならないのだ、ということですね。

 そうすると、オランダを(その弱さゆえもあり)できるだけ短期に降伏させるのはドイツ軍にとって必須のことであったと考えてもよいような気がします(そして降伏させた後、その方面の戦力を南で使用する)。だとすれば、オランダの降伏は1VPではなく、「ゲーム終了時にオランダが降伏していなければドイツ軍は他の条件にかかわらず敗北」とか……? うーん、その場合ドイツ軍プレイヤーが、「ゲーム終了時までにオランダを降伏させればいいのだ」と考えてなんか色々な策を考えるかも……しかしそれはそれでリスクもあるでしょうから、全体としては大丈夫か……?

<追記ここまで>
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DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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