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『歴史群像』151号に個人的に好みな記事が多かったです

 『歴史群像』の最新号を買ってきて読みました。




 『歴史群像』は佐藤俊之さんの「ナポレオン戦争」という素晴らしい連載が続いていて、買わないという選択肢がないのですが、今号は特に個人的に好みな感じの記事が多かったです。


 まず思ったのが、巻末連載マンガの「翼を持つ魔女」(ソ連空軍の女性パイロットリディア・リトヴァクを主人公にしたマンガ)に今回は作者の説明書きが結構多くあって、それらが「正確な時期は分からないがこれこれの資料の材料から、だいたいこれくらいの時期ではないだろうか」とか「この資料が良さそうで参考にする。一方、この資料は人気は高いが信頼性は低い」とかってなことが書かれていたことで、こういう話が(なぜか)私は大好きなので好感度が更に上昇しました(→『歴史群像』連載「翼をもつ魔女」既刊をコンプリート (2018/03/21) )。


 また、有坂純さんの「マケドニア密集軍の誕生」という記事も、いわゆるファランクスに関して一般に知られているイメージが脆弱な根拠しかないということから始まって、こういう説明とかこういう説もあるけどこうか、いやこうか……というような、様々な説を色々比較するものになっていて、好みでした。


 圧巻は古峰文三さんの「再検証 インパール作戦」で、インパール作戦に関する「牟田口がバカだった(あるいは旧日本陸軍という組織が駄目だった)ことがすべての原因」というような、人口に膾炙している見方は再検証が必要で、実はイギリス軍側の特にインパールやコヒマの防衛戦力は一時期本当にほとんどない状態で、イギリス軍側にとってもギリギリだったのであり、日本軍に「まったく勝機が無かったとも言い切れない」(P49)という見方が提示されていたことでした。

 同記事では「インパール作戦の挫折の最大要因は【日本軍の】補給【の問題】ではなく敵の戦術変容にある。」(P48)としていて、具体的に「敵の戦術変容」とは何かというと、「空中補給(輸送機による補給の投下や輸送)」をイギリス軍がし始めたことによる、と。

 それ以前にはビルマ戦線において、イギリス軍が攻勢をすると日本軍の軽装部隊が疾駆イギリス軍の補給源を突いてイギリス軍が敗北する、というのがパターンだった。ところが、イギリス軍が空中補給という方法をやり出し、インパール作戦において孤立したイギリス軍部隊(インド師団とか)に空中補給するから抵抗がやまない。で、空中補給がなかったらもっと早く日本軍はインパールやコヒマに進出できていたと思われ、だとすればイギリス軍は防御戦力がなかったし、日本軍の補給事情もそれによってもっとマシになっていたと思われる、と。


 この「空中補給が始まった」の話は、実はまさに我々がOCSのプレイにおいて体験した話でもあったりします。尼崎会でワニミさんとOCSをひたすらプレイしているわけですが、結構プレイを積み重ねていたある時、ワニミさんがOCSのルール上包囲されてしまった部隊への空中補給が可能だという事に気付かれ、「そうか……!」というわけでその後は「空中補給する」という選択肢が尼崎会には追加されました(それまではそのような選択肢が存在すること自体分かってませんでした)。

 そうすると、防御側の抵抗拠点が落ちなくなるのです。もちろん、それに対抗する方法もいくつかはあるわけですが……。

 同記事ではこのように書かれています。

 【日本の】第15軍は補給の欠如によって負けたのではなく、連合軍の空中補給によってビルマ戦線の戦いの様相が一変し、イギリス軍部隊が包囲されても敗走せず粘り強く戦うようになったことで、一年前のような軽装部隊による迅速な包囲撃滅が見込めなくなった結果、敗北したのである。……戦術の変容がそれまでの常勝パターンを無効にする事例は、第二次世界大戦中にいくつか存在するものの、昭和19年のビルマ戦線で出現した変化は急激かつ鮮やかなものだった。
『歴史群像』151号P47



 同記事ではイギリス軍の輸送機の数がギリギリだったことが書かれていますが、OCSをプレイしていても輸送機がギリギリというか、「輸送機がもっと多ければなぁ!」と思うことが昨今非常に多いです(以前だったら「もっと爆撃機をくれよ!」とか思っていたのでしょうが(^_^;)。

 また、当時の日本軍は敵の輸送機に対する明確な指針を持っておらず、それよりももう少しで落とせそうなインパールに対する爆撃任務の方に重点を置くようにした結果、ますますイギリス軍の輸送機は安全に空中補給できるようになって被包囲拠点が消滅せずに日本軍を苦しめるようになった……というようなことも書かれていました。

 OCSであれば、敵の輸送機がいそう(スタックの一番上には置かれてないでしょうから)な航空基地に自軍の戦闘機を航空制圧に向かわせて撃破、あるいは非活動状態にするとか、空中補給されてしまいそうな敵部隊の10ヘクス以内に自軍の航空基地を確保してそこに戦闘機を置いて敵の空中補給に対して迎撃させるとかってことになるでしょう(尤もそれに対して敵は、戦闘機・戦闘機・輸送機・輸送機とかの4ユニットで空中補給を試み、迎撃側が空戦の途中で敗北するのを期待することになります)。


 尼崎会では、ワニミさんが「日本人兵士がバタバタ倒れていく情景に耐えられない」ということからOCS『BURMA(II)』のプレイは御法度となっているのですが(私もテレビゲームで、自分がアメリカ兵になって日本人兵士を倒していくというやつは「とてもプレイできない」と思いました)、OCS『BURMA(II)』はコマンドマガジンVol.94の紹介記事(P19)で「現在においてインパール作戦のベストと言っても良いかもしれない。」「ハードルはやや高いものの(それでも十分プレイは可能)、『Burma』の完成度が高いと言えるだろうか。」と(断定的ではないもの(^_^;)書かれているので、今回の同記事を読んでぜひプレイされてみてはどうでしょうか。


 あと、今号の読者の声のページには前号の付録ボードゲームの感想が多数収められていて、初めてウォーゲームに触れてみて面白かったというのも多かったのに非常に嬉しくなりました。ボードウォーゲームが若い人にも再度広がっていくといいなぁと思います。


 『歴史群像』について1つ思うのは、昔の記事にはやはりその戦いについて良く知らない人向けの入門的な記事が多かったと思うのですが、今号のような「色んな説がある」「色んな傾向性の資料がある」ことを前提にした、資料の取捨選択だとか、今までの見方を覆すような説の記事とか、そういう記事が増えてきている……とかってことはあるのでしょうか? ちょっと前(145号)の関ヶ原の戦いの新説の記事は衝撃的でしたが。

 個人的にはそういう記事が好みなので、そういう記事が多くなってもらえると嬉しいなぁと思います。

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プロフィール

DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! 見学だけ等も大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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