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グラツィアーニ元帥はフリーメイソンだったからイギリス軍に有利になるように行動した?

 先日購入した『Regio Esercito:The Italian Royal Army in Mussolini's Wars, 1935-1943』ですが、北アフリカにおける1940年の最初のエジプトへの侵攻作戦であるグラツィアーニ攻勢のところ(P44~6)を読んでいて、びっくりしました。


 「グラツィアーニ攻勢ってなんやねん?」という方々は、以前作った動画の中で、↓はグラツィアーニ攻勢を含んで説明してますので見ていただけたら(下のはYouTube上のは削除されてしまったので、ニコニコ動画上でしか見られません)。









 あと、グラツィアーニ攻勢について過去にまとめていたエントリは↓こちら。

1940年9月北アフリカのイタリア軍グラツィアーニ攻勢について (2017/08/06)




 グラツィアーニ攻勢については、多くの本で「ムッソリーニの要求の方が無茶であり、グラツィアーニ元帥はそのようなことができる能力は在リビアイタリア軍にはないと考えていたが、ムッソリーニの命令によりやむを得ず実行せざるを得ず……」という感じで書いてあります。

 ところが、『Regio Esercito』の著者が書くには、リビアのイタリア軍は兵力においてエジプトのイギリス軍を凌駕しており、グラツィアーニ元帥の前任者であったバルボ元帥は「勝てる」として攻勢に熱心だった(バルボは乗機を味方に撃たれて死亡)。ところが後任のグラツィアーニ元帥はぐずぐずぐずぐずとしてイギリス軍の増強を看過し、それでもって「現代のローマ帝国」を失わせることになってしまった。

 で、あくまで著者の「私見」だとはしながらも、グラツィアーニはフリーメイソンの会員であったのではないか、それゆえにイタリア王国に忠誠であるというよりはイギリス側に通じており、イギリスがもう一突きで崩れるところをぐずぐずすることによって救ったのではないのか、という説を割と長々と説明しております(グラツィアーニ攻勢本体の記述は7行しかないのに、この私見は33行に及ぶ)。

 私の個人的な感想としては、「グラツィアーニがフリーメイソンだという証拠がある、ということを挙げないでこういうこと書いていてもしょうがないでしょ」とか「バルボは対英作戦にむしろ反対だったのでは」とか「兵力で凌駕していると言っても、補給体制や補給物資の量において大いに問題があったということが最大の問題だったのでは? その観点からすると兵力が過大であることはむしろ弱点なのでは?」とかとかとか……。

 グラツィアーニ攻勢周辺に関して日本語で読める詳しい資料としては山崎雅弘さんの『歴史群像』2009年8月号の「イタリア軍の北アフリカ戦線」(『歴史群像アーカイブ Vol.11 北アフリカ戦線』にも収録)があり、再読してみましたが色々とこちらの方が納得がいく感じがします。

 また、Wikipedia日本語版のロドルフォ・グラツィアーニのグラツィアーニ攻勢後の記述を見てみたのですが、「フリーメイソンでイギリス側に通じていた可能性」を主張するのはかなり難しそうな印象しか受けませんでした。


 今までチェックしていなかったのですが、英Amazonでこの本の書評を見てみたところ、一番上の人は「イタリア軍はとにかく弱かった、という言説ばかりが溢れている中で、この本はイタリア軍の強かったところに光をあてていて素晴らしい。イタリア軍の全部が全部弱かった、という言説は誤りで、あらゆる軍には強い部隊も弱い部隊もいるのだ。」というようなことを書いておられて、私も「うんうん、それは私もそう思う」という感じなのですが、二番目の書評は「この本の危ない面について警告する。グラツィアーニがフリーメイソンだったなどというのは、イタリアが戦争を失った理由を説明する代替案を見つけようと試みるような、馬鹿げた考えだ。」というように書いてました。

 また、この本の参照資料に関しては、一番目の書評は「作者はイタリア語の文献をほとんど参照してないが、それは瑕疵には当たらない」、二番目の書評は「乱雑で、有効な情報源へのすべての形式の参照が不足している」と書いていました。



 色々と面白いです(*^_^*)

 個人的には、「間違いのない本、バイアスのない本など存在しない」と思いますし、各資料の傾向性や限界性を認識しながら、その時々で取捨選択するということだと思います。私は色々な本の記述を並べて検討するというやり方ですし……。

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DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ゲームをしないウォーゲーマー……でしたが、最近はOCSだけはひたすらプレイしたり情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになりつつありますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! 見学だけ等も大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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