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脚に被弾したアクスブリッジ卿に、ウェリントン公はなんと言ったのか?

 『Children at the Battle of Waterloo』を読み返してましたら、ヨーク公がアクスブリッジ卿が副司令官になるように無理矢理押し込んだ……という話が載ってまして、そこらへん興味を持って調べようとしてましたら、むしろアクスブリッジ卿が片脚を失った(失うきっかけとなった被弾の)時の会話の話が出てきたのが気になって、そちらを調べてました。


 とりあえずまず、ウェリントンとアクスブリッジの関係に関して。

 ウェリントンはまた、摂政王子とヨーク公に贔屓されていた比較的経験の浅いアクスブリッジ卿に、騎兵指揮の全権を与えざるを得なかった。彼はまた、ウェリントンの弟の妻と駆け落ちした人物で、それが恐らく彼の応対の冷たさの一因となっていた - 戦場では反目は明らかには見えなかったけれども。
- 『Waterloo Companion』P26 -



 脚を被弾した時の大体の状況に関して。

 戦いはほとんど終わった。プロイセン軍はパペロットとラ・エイ・サントで戦場に現れた。そして、その夕方七時半ごろ、ウェリントンは英語の新しい表現をもう一つ生み出した。彼は全軍による進撃を決意し、「さあ、始めたからには、最後までしろ(In for a penny, in for a pound.)」と。フランス陣営に向かって帽子を三回振って合図をすると、騎兵も歩兵も、目の前の平原に向かって斜面を駆け降りた。それが最後だった。ネイはなおも猛り狂いながら、捕まれば、どうせ絞首刑だ、とデルロンに向かって叫び、ナポレオンは予備の近衛軍をすべて投入して、総崩れになったフランス軍を押し止めようとしたが、その努力は空しかった。ウェリントンが愛馬コペンハーゲンを駆って、アクスブリッジと並んで前進中、敵の流れ弾がその乗馬の首筋をかすめてアクスブリッジの膝にあたったのはこのときである。
『ウェリントン公爵と皇帝ナポレオン』P287



 『Children at the Battle of Waterloo』には以下のように書かれています。

 実際には負傷したのはウェリントンではなくて、気の毒なアクスブリッジであった。ブドウ弾が彼の膝を打ち砕き、その後ウェリントンの乗馬の首筋を通り過ぎた。ウェリントンが退却するフランス軍を望遠鏡で見ている時に、アクスブリッジが叫んだと言われている。
"By God, Sir, I've lost my leg."
ウェリントンは望遠鏡を目から外しながら言った。
"By God Sir, so you have."
『Children at the Battle of Waterloo』78%の辺り



 これを何と訳すのか……? なんですが、「so you have」とかって基本的に出てこないのです。

 「by God」に関しては英辞郎で見てみると、

【1】神によって
【2】神かけて、絶対に、きっと、必ず
【3】おや、くそっ、ちぇっ

 とあります。ありそうなのとして、アクスブリッジは「くそっ」という意味で言ったのだけども、ウェリントンは「神によって」という意味で返したとか……?


 映画『ワーテルロー』にもこのシーンがあるのですが、恐らくこの"By God, Sir, I've lost my leg.""By God Sir, so you have."でもって、「片脚 失いました」「片脚……しっかり……」という風に和訳されていて、これはかなり有力な訳なのでしょうか?

 ↓2:08辺りから。





 The Battle of Waterloo: is this the most British conversation ever to be held on a battlefield?というサイトを見ていますと、ウェリントンが冷静であるということもあるかもしれないけども、8人も子どもをもうけた妻を捨ててウェリントンの弟の妻と駆け落ちし、決闘するなどという大スキャンダルを巻き起こし、無能な摂政王子とヨーク公から無理矢理押し込まれたアクスブリッジに対して冷淡であったからという可能性が……というような事が書いてあり、「冷淡な返し」であることが可能性としてあり得るっぽいです。


 一方、『The Battle』にはこうありました。

 公爵がその突撃を承諾した時、アクスブリッジ伯爵はそれを自ら率いるつもりであった。だがまさにその瞬間、砲弾の破片が彼の右膝を打ち砕いた。アクスブリッジは叫んだ。
"By God! I've lost my leg!"
 ウェリントンは冷静に返答した。
"Have you, by God?"
 この逸話は作り話かもしれないが、名誉の規範を忠実に守る彼らジェントルマン達は、危険に直面した時の平静さと自尊心を何よりも大事にした。このことは、この2人の指揮官から遠くない場所にいた第18ユサールのDuperierの目撃証言からも裏付けられる。彼はアクスブリッジ伯爵が突然ヴィヴィアンと握手をし、その後歩いて自分の馬をひきつつ後方へ向かうのを見た。Duperierはアクスブリッジが負傷したのかと気付いたが、
「だが、彼は誰からもそう見えないように非常にうまく行動していた。」
 その後すぐ、ワーテルロー村のある家で軍医がアクスブリッジ伯爵の片脚を切断し、伯爵はそれを庭に埋め、称賛されたのであった。
『The Battle A New History of Waterloo』P280


 この本は意味がとりにくいので、誤訳も全然あるでしょうがとりあえず。この本では「冷淡」ということではなく、「平静さ」ということが重視されているようです。

 で、この会話文を見ていて、う~ん、こう……かな? と思ったのは……。

"By God! I've lost my leg!"(「神よ! 脚が一本なくなった!」)
"Have you, by God?"(「神がそうなさったのか?」)


 で、ここらへんまで見たところで、ネット検索してみてたらなんと、英語版Wikipedia上に“Lord Uxbridge's Leg”という項目が! すごい(^_^;

 ……アクスブリッジはこの戦いの残りの間、イギリス軍の軽騎兵部隊による繰り返しの突撃を率いており、乗馬を撃たれて8~9回失っていた。

 1815年6月18日の最後の砲弾のうちの1つが彼の右脚に当たり、膝から上の切断手術を余儀なくされた。伝えられるところによると、恐らく作り話ではあるが、この負傷の時に彼はウェリントン公爵の近くにいて、
"By God, sir, I've lost my leg!"
と叫び、それに対してウェリントンはこう答えたという。
"By God, sir, so you have!"

 恐らくより真実に近いやりとりは、ウェリントンの友人であったJ.W.Crokerが1818年12月8日の日記に書いたもので、そこには戦場から負傷したアクスブリッジを運んだHorace Seymourとの間の会話が書かれている。Seymourはこう言っていたそうだ。
 アクスブリッジが撃たれた時、彼は叫んだ。
"I have got it at last,"
 それにウェリントン公は答えて言った。
"No? Have you, by God?"
Wikipedia“Lord Uxbridge's Leg”


 で、結局どう訳すかの壁にぶち当たります。無理くり「こんなんどうです?」的に訳してみると、

"By God, sir, I've lost my leg!"(「くそっ、脚を一本失いました!」)
"By God, sir, so you have!"(「神が君にそれを与えたのだから!」)

"I have got it at last,"(「ついにやらかした」)
"No? Have you, by God?"(「いや? 天罰じゃないか?」)

 とか……。

 ウェリントンの発言の原文は、分かりにくいことが多いです。英語できる人に教えてもらいたいです……。


 アクスブリッジですがその後、脚の切断手術(当時は麻酔なし)を平然と受けたそうで、これまた賞賛されているようです。

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個人的な意訳

こんにちは。
時々、楽しく読ませて頂いています。

英語に自信はないですが、ウェリントンの発言を個人的に意訳してみました。

1つ目
"By God, sir, I've lost my leg!"=ああ!脚を失った。
"By God, sir, so you have!"=おお!そのようだ。
 たぶんウェリントンはso you have lost your legと言ったつもりと思います。

2つ目
"I have got it at last,"=遂にやられた。
"No? Have you, by God?"=いや(やられていないか)?やられたか!?

 意地の悪い解釈ですが、2つ目の方は負傷した事が良かったように
思える言い回しのような感じを受けます。
No?=You have not lost your leg.の疑問形=大丈夫じゃないか?
Have you, by God?=You have lost your leg.の感嘆形と疑問形=やられたか!?

No title

 おおお、Bernadotte66さん! 私も貴ブログを時々読ませてもらってます(*^_^*)


 和訳ですが、なるほど……。1つ目は「冷静」「冷淡」という意味でも、映画『ワーテルロー』における役者さんの雰囲気的にも合ってますねぇ。

 史実に近いと言われる2つ目のものは、史実として非常にありそうですが劇的ではなく、1つ目のような文が創作されてしまうのもむべなるかなと思ったり……。

 ありがとうございます!(*^_^*)
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DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! 見学だけ等も大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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