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モントゴメリーに進撃路を譲らされたブラッドレーは激怒したのか?

 シチリア戦洋書2冊を見ていて、OCS『Sicily II』の臨時軍団司令部って?に書いてました「ブラッドレー将軍がモントゴメリーに進撃路を横取りされて激怒したってホント?」の件が書いてある場所を見つけました。

 『Sicily 1943』だとP62にありました。

 経緯としては7月13日午後に、アメリカ第45歩兵師団がVizziniという村の近くでイギリス軍第51ハイランド師団と鉢合わせしたのですが、そこは元々アメリカ軍の戦区とされていた場所でした。その夜、連合軍の陸軍総司令官であったアレクサンダー大将からパットン中将に「モントゴメリーからの提案に従い、VizziniからEnnaにかけての道路をイギリス軍に譲りなさい」という命令が来ます。

 ↓『Sicily II』のマップから。

CIMG3779.jpg

 ①がVizzini、②がEnnaの場所です。『Sicily II』のP34の地図によると赤い実線が元々の英米の軍境界線で、赤い点線は地図には書かれてませんが私が推測したその後の軍境界線。『Sicily and the Surrender of Italy』の50%(Kindle版なので)の辺りに「アメリカ軍が考えていたのは、自軍はエトナ山の西側をスイングしてメッシーナへと向かい、一方イギリス第8軍はその兵力を東側に集中させて進むのだろうということだった」とあります。


 ところが、イギリス軍がVizziniからEnnaまでの道路の使用権を得たことにより? P63の地図によればEnnaからシチリア島北岸までに青い実線のように軍境界線が引かれてしまって、つまりはメッシーナに向かうのはイギリス軍だけで、アメリカ軍はまじでシチリア島西部だけを押さえるという役回りに……。

 『Sicily 1943』によるとこの命令をパットンから知らされたブラッドレーは、この予期せぬ転換命令に「livid」したと書かれています。

 「livid」という単語は英辞郎によると「【形-3】〔顔が〕青ざめた、蒼白の 【形-4】〈話〉激怒した、怒り狂った」とあって、「<話>」というのは会話文で使われる表現だということだろうと思うので、「蒼白になった」という解釈の方がいいのかな……と思ったりもしたのですが、試しにある程度の大きさの英英辞典を2種類引いてみたところ、どちらも第一義に「extremely angry(激怒)」と書いてありました(^_^;

 その後に書いてあったのは、「アレクサンダー大将(イギリス人)はアメリカ軍への信頼感がないままなのだ、とブラッドレーは思った」「この事件はその後のブラッドレーのモントゴメリーへの印象に強く影響した」という風なことで、この時点でどうだったのかに関しては良くわからじ。しかしさらにその後に書いてあった、「パットンは、モントゴメリーの無理強いが許されるなら、私の無理強いも許されるはずだ、と考えた【それでその後、パレルモへの突進というのをアレクサンダーに無理やり認めさせることになります】」というくだりには非常ににやりとさせられました。

 パレルモへの進撃の後、7月23日の時点でのP74の地図には軍境界線が黒い実線のように引かれていました。その時点でのイギリス軍は黒い実線の南の鉄道線の辺りまでしか進んでいないのに、アメリカ軍の方は青い実線の南北の直線の辺りまで進出しています。経緯をまだ読んでませんが、結局の所イギリス軍が本当に進めていない中でアメリカ軍がものすごい進撃をして、実力でもって黒い実線のような軍境界線を認めさせたということでしょうか。すごいですね……。



 さて、『Sicily and the Surrender of Italy』によるブラッドレーの反応に関する記述なんですが、こうありました(50%の箇所)。

 ブラッドレー将軍は激しく落胆した。
「このことは我々みんなを大騒ぎさせることになる!」
 彼は叫んだ
「私はこの道路を大いに当てにしていたのです。我々がここを譲らねばならないのなら、全体の進撃が遅れることになる。」
 ブラッドレー将軍は、第2軍団の進撃の勢いを維持する為に、少なくとも第45歩兵師団が第1師団の左へ移動するまでの間、このハイウェイ124号を使用させてくれないかと頼んだ。だがそれへの答えはこうだった。
「すまない、ブラッド。この転換は即座に行ってくれ。モンティは直ちにこの道路を使いたいんだそうだ。」
 アレクサンダー将軍の指示文書を読んだ後、ブラッドレーはむっつりしたままそれをパットンに返却した。


 この後、ブラッドレーはこのことが枢軸軍を大いに利することになると知っていた……ということが割と長く書かれてまして、さらに、

 ブラッドレーには、モントゴメリー将軍は単独でメッシーナを取るつもりで、その間アメリカ第7軍をシチリア島の西半分の領域に閉じ込めておくつもりなのだと思われた。(注21:Bradley, A Soldier's Story, pp.135-36)


 とありました。会話やブラッドレーの心情はブラッドレー本人の回想録から取られているということなら、だいぶ信用できるのでしょうかね……?

 『Sicily and the Surrender of Italy』の記述からいうと「激怒」かどうかあやしい気はしますが、まあしかし取りようによっては「激怒」と取れなくもない? 紙幅が限られている中でうまく伝えようとするならば「激怒」という表現はまあありですかねー。私個人としては、別の本のブラッドレーへの評価などから、単純に激怒したわけではないと解釈したいところですけども。

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No title

該当部分は「A Soldier's Story」では、冒頭の自身の発言に先だって「I whistled」と表現しており、最後の読み終わった命令書をパットンに返す際には「gloomily」と書いています。

Whistleは「ぎゃーぎゃーわめく」とも解釈できますが、普通に読めば「口笛を吹いた」ですので、「パットンの命令を聞いた私はピューと口笛を鳴らした」となり、非常に抑えた不満表現、ともとれるかもしれません。また、これならば末尾の「gloomily(憂鬱な気持ちで)」との整合性もとれるように思います。
 もちろん発言者であるブラッドレー個人による、しかも7年後の回想ですので、それがそのまま現実に起きた事かどうかはわかりません。

A Slodier's Storyではその後に、シチリア作戦が終了したのちにパットンがモンゴメリにこの件に関して不満を述べたところ、モンゴメリが「気に入らない命令をなんで無視しないんだ? 私ならそうする」と言われたと記しています。

そしてその後にブラッドレー自身のこの件に関する分析というか感想が述べられていて、イギリス陸軍とアメリカ陸軍における指揮統率の方法の違いというか、命令伝達の話法が直接的か間接的かといった問題が書かれており、個人的にはこの部分が非常に興味深かったです。

ご参考までに

Re: No title

 口笛とはすごいですね……(^_^;

 どの話も興味深いです。ありがとうございます~。
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プロフィール

DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! 見学だけ等も大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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