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大戦中を通じて南方軍総司令官であった寺内寿一(ひさいち)元帥について

 OCSで『Luzon: Race for Bataan』(1941~2)を作り、今『South Burma』(仮)(1942/1945)を作れないかなと悪戦苦闘しているわけですが、その間ずっと、それらの軍部隊の上級司令部であった南方軍の総司令官であった寺内寿一(ひさいち)元帥というのはどういう人なのだろうというのが気になってました。


Hisaichi Terauchi 2

 ↑寺内寿一元帥(Wikipediaから)



 で、この春にゲームマーケット東京に行った時に神保町で『元帥寺内寿一』という本を見つけて買ってみたんですが、まだ全然読んでいません バキッ!!☆/(x_x)






 それはともかくとして、最近本屋に行っていると光人社NF文庫で『都道府県別 陸軍軍人列伝』という本が出てまして、悩んだものの買ってみました。




 藤井非三四氏の本で、東西2分冊で以前出ていたものが今回1冊の文庫本になって出たもののようです。

 「はじめに」を読んでますと、「人物を中心に歴史を見る」方が興味が持てるじゃないか、戦国時代なんかはそうなっているのに、近現代史ではそういうのが排斥されている傾向にあるのではないか、なので「人物」というものに興味を持って見られる一助となるかもと思って書いてみた……というようなことでした。

 もちろんこれは賛否両論あると思います。例えば、『大いなる聖戦』なんかは、北アフリカ戦の流れはロンメルとかモントゴメリーとかって人物とは何の関係もなく、それぞれの時期の大戦全体の状況から来る投入戦力と補給によってすべて説明できる、というようなことを書いてました(^_^;




 まあそういう方向性の見方もあるかとも思いますけども、私は個人的に歴史や戦史における「人物(キャラクター)」に関心がかなりある方で、藤井非三四氏の主張?には大いに共感するものがありました(個人的には、指揮官のキャラクターによって歴史が動いている割合は結構高いのではないか、と以前より思うようになっている感があります)。

 ただそこで問題になってくるのは、「人物評」というのは著者によるバイアス・偏見が大きくなりがちだということで、ロンメルなんかも「天才!」説もあれば、「単なる無謀な指揮官」評をしている著名戦史家もいるそうです。

 しかし逆に、「偏っているかもしれない短い人物評」でストンと腑に落ちる……ということもあるなぁと最近思ってまして、「石原莞爾は、その特異な終末思想が時代にアピールした。軍人というよりも宗教家としての才能に溢れていた」という評で「なるほどなぁ!」と思ったりしました(『大東亜戦争の謎を解く』P41,2)。





 で、前置きが長くなりすぎましたが、寺内寿一元帥に関して、『都道府県別 陸軍軍人列伝』(P510~516)をメインとして今回まとめてみようと思います。




 そもそも、寺内正毅と寺内寿一が「親子で元帥」という世界的にも珍しいケースなのだそうです(他の例が知りたいです。皇族とか王族とか以外で)。

 父親の寺内正毅は出征していないそうですが、陸相在任期間の記録を作ったり朝鮮総督などとして日韓併合を成し遂げたので元帥になったのだろうといいます。

 寿一の評価はまったく二分されるそうで、「軟弱な二代目、武人どころか単なる遊び人」という酷評と、「勉強こそしなかったが頭脳明晰で、なにより出世欲がないのが素晴らしい。」という絶賛?があるそうです。

 陸軍内での評判が良かったのは、人にご馳走するのが好きで、軍の多人数を料亭に招いて支払いを全部自分で持ったこと(が多かった?)に行き着くそうで、例えば昭和8年の「ゴーストップ事件」の時に大阪第4師団長であった寺内寿一はなかなか強硬に軍の立場を訴えて陸相の荒木貞夫が「寺内を見直した」と言ったそうですが、それより軍と警察の話がついた後、警察や大阪府の役人を多数料亭に招待して自分もちで大盤振る舞いをやったそうです。

 父親が超エリートであっただけに、金持ちだったから可能だったのでしょうか。

 能力の方はというと、「成績や能力については注目されなかった。ただ関東大震災のとき、近衛師団参謀長であり、てきぱきと処置をして、「さすがは東京育ち、地理に明るい」とされたぐらいであった。【……】将官演習旅行の成績が悪かったようで、ここで予備役に編入【……】」されるところを何とか現役にとどまることができたものの、中将となれてそれで終わり……と思っていた(中将まではかなり多くがなれるが、大将はなかなかなれない)のが、無欲が幸いしたか人に引き立てられて大将に。これらには軍内部人事における「父親への義理」という側面もあったようです。

 その後、二・二六事件後に親子二代で陸相となり、徹底した粛清人事を断行(ただしこれは冷徹な能吏梅津美治郎が次官にいたからだとか)。

 昭和16年に南方軍司令官となったのは、海軍の山本五十六よりも先任が望ましいという条件で7人ほどに絞られ、その中で手が空いている軍事参議官かつ最先任者が寺内寿一であったからとか。あるいはまた、東條英機(長州閥が大嫌い)と寺内寿一(父が長州閥のボスだった)とは仲が悪く、東條が寺内を東京に置いておきたくないという気持ちがあったのではなかろうかとも書いてあります。

 寺内寿一の方でも東條英機に対して不満を募らせており、東條が占領地視察に訪れても出迎えすらせず、大本営とは喧嘩状態であったとか……。

 また、降伏の儀式の時に、名刀がないと格好が付かないからと、わざわざ日本本土まで飛行機で刀を取りに帰らせたそうです。




 以上の見方は割と悪い方に偏っているとは思います。試しに『元帥寺内寿一』をパラパラと見てみたら、こっちはこっちで戦後に寺内寿一と関係のあった軍人達の筆による寺内寿一顕彰のための本であるらしく、中立的な、あるいは研究的な本では全然ないようでした(中を見ずに買った感があります……1500円くらいだったと思うのでまあいいのですけど)。



 他の資料で寺内寿一に関する短い評伝を探してみたのですが、数冊持っている日本軍人の列伝形式の本には寺内寿一は取り上げられていませんでした。

 一方、英語による第二次世界大戦中の世界中の軍事司令官等に関する百科事典形式の本を3冊持っているのですが、その3冊にはすべて寺内寿一の項目がありました。




(上段真ん中の『Who Was Who In World War II』の和訳本が2種類あり、それらが下段になります。が下段右側は反戦主義的な研究者が軍事用語に知識がない中で翻訳されたかのようで、個人的にはお勧めしません。左側は元軍人の軍事研究者が監修であり、記述も丁寧ですし、兵器関係のコンテンツも含んでいるので非常にお勧めします。)


 上段左の『WHO WAS WHO IN THE SECOND WORLD WAR』は記述が最も簡潔であり、真ん中の『Who Was Who In World War II』の少し短い版的な内容であったので省略します。

 真ん中の『Who Was Who In World War II』には寺内寿一の写真が載っており、キャプションには「日本軍の指揮官の中でもかなり無慈悲【more inhumane】な人物であった。」と書かれています(P203)。また、「彼【寺内寿一】は【……】現地人に対しあまりに寛大な政策を施したとして今村均を非難した。」という風にも書かれていました。まあ今村均は陸軍の当時の主流派のほぼ全員から非難されていたのでしょうけども。


 一番右の『The Biographical Dictionary of World War II』には、「この老貴族【伯爵】は有能な行政官であり、ロジスティシャンであったが、無能な戦略家であった。優秀な部下の作戦を台無しにした彼の多くの失敗については、「山下【奉文】」で詳しく取り上げている。」とありました(P558)。

 「山下【奉文】」を見ると、寺内と山下は政敵であったそうで(山下が主流派から嫌われまくっていた?)、フィリピン防衛戦において「日本の最も偉大な軍人【山下】は、日本で最も無能な将軍の一人である寺内の深刻な妨害にもかかわらず、精力的に行動した。」(P626)とありました。



 あと、今回見つけたものとしては、「寺内寿一」というウェブサイトの一番下の記事には、インパール戦やフィリピン戦の最中にもサイゴンの贅沢な公館で優雅な生活を続けていたとか、日本本国から自分の妾(芸妓)を軍用機で総司令部の官舎に連れ込んでいたというようなことが書かれていました。


 まあ、さすがに悪いことだらけだと前述の『元帥寺内寿一』なんていう本も作りようがないでしょうし、良い面も色々あったんだけども、悪い面もいっぱいあったということではなかろうかと想像しますけど、どうなんでしょうか。



 しかしやはり、「短い人物評」は、偏っているとしても興味関心を持つには非常に優れていると改めて思いました。また折に触れて『都道府県別 陸軍軍人列伝』等を紐解ければと思います。

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Author:DSSSM(松浦豊)
 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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