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『The Italian War on the Eastern Front, 1941-1943』 読了:なぜ、イタリア軍は弱かったという見方が無批判に受け入れられ続けたのか?

 ようやく、『The Italian War on the Eastern Front, 1941-1943: Operations, Myths and Memories』を読了しました。「イタリア軍は弱かった」という見方に対して、様々な証拠や観点から再検討をおこなった本です。







 これまでにこの本関係で書いたブログ記事をまとめてみました。


『The Italian War on the Eastern Front, 1941–1943: Operations, Myths and Memories』を注文しました (2020/01/28)

イタリア軍歩兵師団が「2単位」編成であること等の合理的な理由、その4 (2020/03/22)

ミリタリー本なんかの脚注やPCソフトの脚注機能、それに索引とかについて (2020/05/26)

イタリア軍のメッセ将軍は、ドイツ軍に激怒して騎士鉄十字章を投げ捨てた?(が、その後も佩用し続けた) (2020/10/09)

ドイツ軍の第318歩兵連隊は、小土星作戦開始後どうなったのか?(付:OCS『Case Blue』) (2020/10/27)

オストロゴジスク=ロッソシ作戦:イタリア軍のアルピーニ軍団の「敢闘」は、誇張されたものである?(付:OCS『Case Blue』) (2020/10/29)

『The Italian War on the Eastern Front, 1941-1943』から、東部戦線のイタリア軍師団の評価 (2023/04/18)

『The Italian War on the Eastern Front, 1941-1943』から、東部戦線のイタリア軍の上級指揮官達の評価 (2023/04/20)

『The Italian War on the Eastern Front, 1941-1943』から、東部戦線のイタリア軍は人道的で、現地民に何も悪いことをしなかったのか? (2023/06/10)




 ↑で挙げました「東部戦線のイタリア軍の上級指揮官達の評価」なんかもそうですが、この本ではイタリア軍の上級指揮官達は無能とは言えない、むしろ有能な者も多かった(ただし、訓練された下士官クラスの人材が不足していたのは確か)とか、あるいは東部戦線のイタリア軍はそれまでの北アフリカ戦などでの戦訓も着実にフィードバックして日々改善をおこなっており、もちろん国力から来る限界は大きかったが、決して無能ではなかったと考えられる……というようなことが様々な証拠を挙げて書かれています。

 そして本の最後で、戦後における「戦中のイタリア軍」に対する見方に関して、どのような攻防があったのかが検討されています。


 大まかに言えば、戦後に「イタリア軍(上層部)は無能であった。それによって無辜のイタリア軍兵士達が犠牲になった」という言説を大いに主張したのは、

・兵士達の回顧録(自分達は何も知らない庶民で、犠牲者だった)
・政治的左派(その敵の右派は、軍を擁護していた)
・クレムリン

 だそうで、「残念なことに、これらの神話は国内および国際的な学界にほぼ受け入れられ、第二次世界大戦中のイタリアに対する我々の理解を歪めてしまった。」(P334)

 それに対して戦後、右派と軍の擁護者として孤軍奮闘せざるを得なくなったメッセ将軍は多くの記事や本を書いて、「イタリア軍は何ら悪いことをしなかった」と主張しまくったそうです。その言説はそれはそれで偏りが大きいものの、政治的左派によるメッセ攻撃の内容(例えば、チュニジアで枢軸軍が苦難にある時にメッセは自分を元帥に昇進させるようにムッソリーニに要請したとか、自分の名声を重視して元帥の位を得た直後に「鶏のように」降伏したとか、あるいは東部戦線でも敗北が予見できていたのに、十分な補給を確保することなく部下達を見捨てたとか)は、その後の裁判で事実とは認定されず、メッセの主張よりも嘘の度合いがあまりに大きかったのですが、結局はそういう風な政治的左派が広めまくった言説が世の中に広がっていってしまった……。


 私自身、1980年代の中高生だった時代には日本でも「左翼にあらずんば人間にあらず」という感じで、ほんの少しでも左派的でない言説をすれば社会から総叩きされたのを見てきましたから、「あ~、さもありなん」という気がしました(T_T)


 日本では、一時以来『AxisPowersヘタリア』という作品が流行ったりしましたが、一方でその後ミリタリー界ではイタリア軍擁護的な出版や記事も結構出てきたような気がしますから、現状ではそれほど悲観したものでもないかと思います(『AxisPowersヘタリア』も、別に悪かったというものでもなく、様々な興味関心を持つきっかけになったという点で素晴らしい作品だったのだろうと思います)。できれば、この『The Italian War on the Eastern Front, 1941-1943: Operations, Myths and Memories』(の内容)を有名人が取り上げてくれたらとも思いますが……。


 あと、個人的にはメッセ将軍の実像的な部分に興味があるわけですが、この本で最後の方のところ(P334)に、「実際、メッセは、冷戦政治がいかにイタリア陸軍と第二次世界大戦におけるその役割に対する私たちの認識をいまだに歪めているかを示す好例であり、さらなる研究が必要であることを示すもう一つの事例でもある。メッセの学問的な伝記が出版されることが最も望ましい。」と書かれていて、とりあえず現状ではメッセに関する学問的な研究がされた出版物はまだない状態である、ということなんでしょうか。期待したいところですが……。



 とりあえず、これでようやく「特に読みたい積ん読本」の一冊を読了することができました。次は『Inside Hitler's High Command』を読みたいと思っています。その次は『Fighting Rommel: The British Imperial Army in North Africa during the Second World War, 1941-1943』で。




 
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 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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