fc2ブログ

OCS『South Burma』(仮)製作のために:迂回して一挙にラングーンを突くという作戦について

 前回に引き続いて、ラングーンへ突進するという作戦について。

 『歩兵第二百十四聯隊戦記』を読んでましたら、この作戦行動について結構印象的な記述があったので、引用し検討してみたいと思います。


unit8523.jpg


 【第33】師団は3月25日【ママ。2月25日の間違いと思われます】各部隊長をメヨンガル(シッタン東南方4キロ)の司令部に集め、ラングーン攻略に関する作戦方針を示した。
 すなわち、まず政戦略上の要地である首都ラングーンを奪取した後、北進して決戦を指導しようとするものであった。
 というのも、泰緬国境を越えるとき、すでに多数の装備を残置し、さらにその後、数次の戦闘と急速な突進で、相当の損耗を来たしているにもかかわらず補給はなく、しかも、ラングーン攻略後は、北部ビルマ作戦を遂行しなければならないので、この際、万一の場合にも軍の兵站線を海路に求めうる戦略上の要求、ならびに、すみやかに英総督府の所在地を占領するという国際政治上の効果を考慮しての重要な決定であった。
 すなわち英印軍は最近、あらたにラングーンに上陸した精鋭戦車部隊第7機甲旅団を加え、これをペグー付近に進めて、日本軍の進撃を阻止しようとする態勢であり、また北方マンダレー方向からは中国第6軍がトングー付近に集結し南下の情勢にあった。この敵両軍の間の、15キロの間を抜けて、一挙にラングーンに殺到することは、いわば戦略的挺進奇襲であり、きわめて放胆な戦略であった。
 ペグーの敵には第55師団が当たることとなり、【第33】師団は一路ラングーンに挺進、一挙に敵の指揮中枢戦略基地を占領することとなった。いま考えてもぞっとするほどの作戦計画であった。
 というのは、もし敵がラングーンまたはその周辺で2~3日の抵抗でもしたならば、【第33】師団の後方はペグー、トングーの敵に断たれ、しかも新鋭第7機甲旅団に引っ掻き回される羽目になるのは明らかであったからだ。いわんやラングーンの配備状況はまったく不明であるばかりでなく、第7機甲旅団の増援に続いて、英国はさらに有力部隊を上陸させて、あくまでもラングーンを確保しようとするかもしれなかったのだから、状況不明と錯誤の交錯するなかで、この放胆な作戦を決定する原動力となった第33師団長桜井中将の卓抜さは高く評価されるべきであろう。
 さらには、「敵にかまうな、この際ほしいのはラングーンという港だ。敵の指揮中枢だ。戦略要地だ」と徹底した作戦目的を確立したことが、敵の過早退却と相まって師団の作戦を成功に導いたのである。チャーチルはラングーン喪失後のことをその回顧録で次のように述べている。「ラングーンの失陥はビルマの喪失を意味した。したがってアレキサンダー大将に援軍を送る望みはまったくなかった。上陸させる港がなかったからである」と。
『歩兵第二百十四聯隊戦記』P318


 なかなかに燃える文章ではあるんですが、(無意識の?)誇張はあると思います。

 「15キロの間を抜けて」という文ですが、上の画像の1ヘクスは約8kmで、つまり2ヘクスくらいに相当しますが、中国軍と英印軍の間が15キロということはないかな、と。

 英印軍の部隊は画像の「3/4」とある辺りにもいたようですが、中国軍がいたというトングーは画像の北端から13ヘクス程度北にあり、いくらか南下していたとしてもそれほど英印軍と接近はしていなかったのではないかと(今のところ)思います。

 「15キロ」というのは、第214連隊と第215連隊の間の距離がそれぐらいで並進した、ということなら理解できる気がします。


 この時点での中国国民党軍の脅威について、まだ全然調べられていないのですが、今のところの印象ではそれほどでもなかったのではないかという感じで思っています。ただ、当時日本軍側は脅威に思っていたというのは確かなのでしょうし、またゲーム上でも「中国軍の脅威」はある程度あった方が良いでしょうね。


 当時の英印軍側は、「日本軍の次の狙いは、ペグーを押さえることだろう」と考え、またペグー周辺の地形は戦車戦に向いているため、第7機甲旅団をそこに差し向けて日本軍に大ダメージを与えることを狙いました。実際それは最もありそうなことだったと思いますが、史実の日本軍はある意味「その裏をかいた」わけで、そしてゲームをプレイする現代の我々は、それを知っているわけです(ウォーゲームにおいては良くあることですが!)。


<2023/10/24追記>

 陸戦史集『ビルマ進攻作戦』を読んでましたら、この時期の英印軍側(ウェーヴェル将軍)の考え方について書かれてましたので、引用してみます。

 ウェーベル大将は、シッタン河以北にはまだ大なる日本軍がいないこと、第7機甲旅団がまだ無傷であり、また、中国軍がトングーに向けて南下中である状況を確認した。同大将はビルマに来る途中、もしラングーンの撤退が必要となれば、イラワジ河下流を越え、東方の中国軍と連接して一連の戦線を構成することが必要であり、そのため、なるべく多くの部隊が必要であると考えていた。そこで、早速さきにハートレー大将が【カルカッタに反転せよと】回航処置を認可した第63旅団と砲兵1個連隊を、再度ラングーンに向けるよう手配し直した。
 それとともに、これらの増援部隊が到着するまではラングーンを確保しようと決心し、そのためには単に防勢をとるだけでなく、時をかせぐため日本軍に一撃を加えるべく、ペグー方面で攻勢をとれとハットン中将に命じた。
『ビルマ進攻作戦』P80,1


 また、同書にはトングー方面から英印軍が日本軍を圧迫しており、日本軍の側面防御部隊がそれを撃退していたことが書かれていました。もし日本軍側が撃退できなかったら、苦境に陥るわけですね。

川島支隊の右翼掩護 軍直轄で作戦を命ぜられた川島支隊は、軍主力の渡河に先立ち、3月2日夜クンゼイク北方でシッタン河を渡って前進し、3月4日にダイクを占領した。その後、北方からしばし英印軍の攻撃を受けたが、支隊はそのつどこれを撃退し、軍主力のラングーン作戦間、ダイク付近の陣地を確保してその右側背を安全にした。
『ビルマ進攻作戦』P82



<追記ここまで>



 英印軍プレイヤーは当然、ペグー北東のジャングル地帯の、少なくとも道路の結節点や小河川の南側には警戒部隊を置くことでしょうね。ただまあ、日本軍側はペグーの南側を迂回していくという方法もあるかもしれませんし、逆に全力でペグーを包囲・攻撃するというような作戦もありかもです。

 英印軍プレイヤーがラングーン周辺で半周防御のようなことをした場合は……どうなるんでしょう。確かに結構やっかいかもしれません。



 あと、ペグー北東のジャングル(「ペグー山系」と呼ぶようです)についてですが、今回見つけた記述には↓のようにありました。

 【第215】聯隊は休息をとることなく急進撃を続行した。夜明けまでにペグー山系内に潜入しなければならない。幸いにも、【3月4日の】この朝は低い霧があり、延々と続くこの大部隊は、敵機に発見されることなく平原を踏破し、山系内の樹林下に入ることができた。
 その後、聯隊は作間聯隊【第214連隊】と並列した形で、ペグー山系内の密林を南下していった。高い山はないが、起伏の多い広大なジャングル地帯であり、昼間は敵機の眼をのがれて樹間に仮眠し、夜間は南へ南へと行進する。歩く歩く、ただ南をめざして、汗と砂塵にまみれてひたすら歩きつづけた。シッタン出発以来、夜行軍の連続であり。【ママ】睡眠不足と疲労とは大なるものがあった。しかし、ただ「ラングーン占領」、これが、苦痛に耐える合言葉であった。
『歩兵第二一五聯隊戦記』P159

 【第214】聯隊の行軍速度、とくに縦隊の先頭をきた第3大隊尖兵中隊長の進路選定のよさが賞賛されるべきであろう。
『歩兵第二百十四聯隊戦記』P319


 これらを見ていると、やはりずっとジャングル地帯であったようで、また進路は、少なくとも大きな地図には表示されていないようなものをある程度以上進んでいったような印象を受けました。(ただし、シッタン川西岸地域についてはずっと平地でも良さそうで、そのように修正しようと思います)


 第33師団の部隊のこの進撃の速さについては、どうも何らかの特別ルールは必要なのかも、という気が現状してます。しかしどのようなルールにしたものか……。「2ターンの間、予備モードによる移動力増加を、1/4ではなく、全移動力にできる」とか……? あんまりうまそうな気はしませんけど。


 また、別件になりますが、「シッタン川橋梁の爆破」に関するルールは必要だろうと思っていたのですが、前回、今回と調べてみていて、「爆破のルールはなしにした方が、最終的なタイムスケジュールがうまくいくのではなかろうか」という気がしてます。もしそれでうまくいきそうなら、特別ルールは少ない方が良いですし……(^_^;

関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

今までの訪問者数(2011/9/17以降)
プロフィール

DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! VASSALでのオンラインインストも大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

 ブログで書いた物のうち、

 OCS関係の記事は

「OCSの物置2」



 戦史物の記事は

「戦史物の物置」


 で、アクセスしやすいようにカテゴリ毎にまとめてありますのでそちらもどうぞ。

Twitter
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
オススメ本
バナーで応援コーナー
ぜひ見て頂きたいページへのリンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR