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『戦慄の記録 インパール』読了しました & 佐藤幸徳第31師団長の独断撤退への賛否について

 『戦慄の記録 インパール』を読了しました。録画していた番組も全部見ました。






 私はこれまで、インパール関連本は3冊程度、牟田口廉也中将関連本も2冊程度読んだだけだとは思うんですが、中でも一番理性的、かつ編集の上でも様々な話にバランス良く触れて、良くまとめられた良書であるような印象を受けました。番組(2017年)以前には未発見であったような資料や証言も多く盛り込まれていましたし。


 個人的に論争的な話が好きなので、巻末近くに、「佐藤幸徳第31師団長の独断撤退への賛否について」と「牟田口中将の構想通りに(上官の河辺は禁止した)ディマプールへの突進を行っていたら日本軍は勝てたのか」ということについて、複数の人の意見が載っているのが特に興味深かったです。


 「佐藤幸徳第31師団長の独断撤退への賛否について」なんですが、OCS『Burma II』ルールブックの参考文献一覧のところ(P41)に↓のような記述があったのが、どういうことなのかずっと分かっていませんでした。

『Monograph 134: Burma Operations Record- 15 Army Operations』 アメリカ軍:この資料も戦後、米軍の依頼で日本軍の生存者が作成したものです。この資料は、著者が反佐藤派であるため、インパール作戦の失敗を彼のせいにすることに多くの紙幅を費やしているのが難点です。


 私はどうも、これまで「独断撤退して当然じゃないか」という派の本ばかりに触れてきたようなのですが、『戦慄の記録 インパール』によると、反佐藤派として「どのように合理的な理由があろうとも、命令違反は絶対に許されない」という考え方をする人が結構いたのと、それから「独断撤退において隣接する第15師団に何も知らせなかったため、第15師団の側面がいきなりがら空きとなり、多くの死傷者が出たのが許せない」という感情がどうしてもあった、ということらしいです。

 一方で『Burma II』が挙げた参考文献の場合、「インパール作戦の失敗を彼(佐藤幸徳)のせいにする」というわけですから、もしこの件で佐藤幸徳が批判されているという見立てが正しければ、佐藤師団長が独断撤退していなければインパール作戦には勝てたはず、ということなのでしょうか(そういう書き方は『戦慄の記録 インパール』にはなかったように思います)。


 ただ、もう一つの「牟田口中将の構想通りに(上官の河辺は禁止した)ディマプールへの突進を行っていたら日本軍は勝てたのか」ということについては、『戦慄の記録 インパール』は複数の人の意見を挙げて、最終的には↓の研究論文?を挙げて、ディマプールの占領など不可能だったと結論づけているように思えます。

平成14年度戦争史研究国際フォーラム報告書
日本の戦争指導におけるビルマ戦線--インパール作戦を中心に--
(うちのブラウザ上で開いて見ると字が崩れているのですが、完全にダウンロードしてpdfファイルを開けばちゃんと読めると思います。ちなみにこの報告書は、英語版が1万円以上で売られているのを見たのですが、日本語なら無料で読めるわけで、結構いいと思いますのでオススメです)


 しかしそうでなくとも、「命令違反は許されない」派にとって都合が悪いだろうと思うのは、ディマプールに進むことは牟田口中将の上官である河辺正三ビルマ方面軍司令官が禁じていたということです。

 『牟田口廉也とインパール作戦』という本も、「日本陸軍は任務遂行に全力を尽くせ」という型の組織だったのだから、牟田口司令官がやると決めたら部下達はそれに邁進するのが要求されることで、部下達がそうしなかったことが良くなかったのではないのか、という論だと思うのですが、だとしたらより上級の司令官の命令に沿って、ディマプールに進むことはできない。





 『戦慄の記録 インパール』によると牟田口廉也は戦後、ずっと本当に贖罪の日々を送っていたらしいのですが(それらの具体的な描写があって、結構意外でびっくりしました)、イギリスの軍人から「当時日本軍がディマプールに突進していればイギリス軍は敗北必至だった」という手紙をもらって大喜びし、その後は河辺正三がディマプールへの進撃を禁止したことが作戦の失敗をもたらしたのだと主張する録音を残したそうです。

 でも、命令違反は許されないんじゃ? 命令違反した師団長を更迭しまくったのに、軍司令官として方面軍司令官への抗命を戦後したということになるのでは。



 命令違反に対する意見や、任務遂行型組織という見方に対する意見ですが、私は個人的にゲーム理論や進化論的な見方が好きなので、「命令違反は許されない組織」「任務遂行型組織」は、それが成功する限りにおいて勢力圏を伸ばすだろうし、いくらかの勢力圏を持つのは持つだろうと思います。でも「個々の判断を尊重する組織」「任務に疑問を持ってもいい組織」ももちろん勢力圏を持つわけで、どっちが勢力圏を伸ばせるかの話だと考えます。

 でも、現今で言えばロシア軍や北朝鮮軍はまさに「命令違反は許されない組織」だと思います。旧日本陸軍の話は昔の話だと思うから、「命令違反は許されないじゃないか!」と頭で思えるとしても、じゃあそう考える人は今のロシア軍や北朝鮮軍に所属してもその中であくまで頑張るんですね、と言われたら、今の自分に当てはめて「いや、まっぴらごめん」と思ったりするのでは……。
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 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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