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『リデルハート 戦略家の生涯とリベラルな戦争観』を読了しました

 古本屋でたまたま見つけて買ってみた『リデルハート 戦略家の生涯とリベラルな戦争観』を読了しました。





 この本、記述の姿勢が個人的に非常に好みでした。

 リデルハートについては今までに読んだ記事等などでも賛否両論がある(自分の功績を大きく見せようとしたとか)ことは少し知ってましたけども、この本はリデルハートに関してその功績を語るものではありながら、その欠点も事細かく大量に挙げていて、むしろ欠点に関して割かれた分量の方が多いのではないかと思われるほどでした。

 私は、人間には長所も短所も両方あるのが当たり前だと思いますし、長所しかないとか短所しかないとする記述には胡散臭さを非常に感じるタチではないかと思われます(ごくまれに、長所しかない、短所しかない人間もいるでしょうけども。大谷翔平とか、短所あるんでしょうか?(^_^;)。

 なので、牟田口廉也の長所に関して非常に気になり続けていますし、あるいは、GameJournal誌で児玉源太郎には長所しかないかのような連載記事(そうでもなかったでしょうか?(^_^;)があったのに対して、「ホンマかいな」という印象を抱いたりしました。



 ミリタリーからはずれますが、『人新世の「資本論」』というベストセラー本を買って読んでみていた時に、著者が晩年のマルクスの論について褒めまくりどころか、現代の思想家の色々な論と比べても必ず勝っているかのような記述を繰り返すのに、私は超絶胡散臭さを感じて途中で読むのをやめてしまいました……。環境問題に関して劇的な変革をしなければどうにもならないでしょという著者の方向性に、私はかなり一致する(ただし、すでに手遅れである可能性の方が遙かに高いと私は思っていますけども)のですが、晩年マルクスに対するあまりの傾倒ぶりとか、変革ができる・できて当然と思っているかのような姿勢には個人的に違和感を感じています(尤も、私なんかは世の中を変えることはできない人間で、この著者のように「傾倒性」が高く「楽観的」な人間が、世の中を変えるのでしょう)。






 閑話休題。

 リデルハートについての後世からの論評は、大木毅さんが短く触れていたものの他は『戦略の世界史(上)』での数ページの記述が私が読んだ今までの上限だったと思うのですが、この400ページを越える本で細かくその長所にも短所にも細かく触れ得たというのは大変ありがたかったです。

『戦略の世界史(上)』で個人的に価値のあった部分(付:OCS『The Third Winter』ネタ) (2022/01/05)



 中でも白眉は、「リデルハートがグデーリアンに戦前から影響を与えていた」という説に関して、戦後ある研究者が否定した後、別の研究者がやっぱり与えていたということを明らかにした……という話でした(もちろん、それがまた否定されるとか、議論が継続している可能性もあるでしょうけども)。

 あと、索引があるのが偉いです。参考文献一覧は当然あります。


 この本の個人的に良くなかった面も書いておきますと、同じ内容の繰り返しが多いです。繰り返しをうまく編集すれば、分量は半分近くになったのではないでしょうか。また、間接的アプローチがうまく実戦に適用できないという話とか、西側流の戦争方法とかに関するもっと具体的な例をいくつも挙げてくれると、個人的にはもっと良かったと思いました。

 この本が書かれた時期が2008年で、リデルハートに発する西側流の戦争方法が良いものであるという主張はまあ別にいいと思うのですけども、個人的には、その後のロシアによるクリミア併合やウクライナ戦争というような「権威主義国家による戦争方法」に対して西側流の戦争方法がどうしていけるのだろうか、というようなことが非常に気にかかっています。

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個人評伝

ご無沙汰しております、リデル・ハートの情報大変参考になります。

マルクス等の個人評伝に関しても、多面的に見ることは大事ですね。

こういう本もありご参考にいただければと存じます。(地元の図書館で借りれました)
インテレクチュアルズ ポール・ジョンソン著 ; 別宮 貞徳 訳



https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%BA-%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/4764102439

No title

 おお~、こんな本が……。

 実は私、ルソーの教育書である『エミール』で大学の卒論を書いたんですよ。ルソーは捨て子をしていたわけですが……(尤も当時のフランスでは、乳幼児の世話は下賤な者がやることであると見なされており、乳幼児が死んでも別に悲しいとは見なされなかったらしいですが……)。

 私も図書館に行ったら探してみようと思います。

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Author:DSSSM(松浦豊)
 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! VASSALでのオンラインインストも大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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