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ウクライナ戦争における今のロシアよりも、日中戦争当時の日本の方がはるかにダメダメだった2つの点

 先日、↓というのを書きました。

『この国の戦争 : 太平洋戦争をどう読むか』読了:日中戦争はウクライナ戦争とよく似ている? (2023/05/17)



 その後、『図説 日中戦争』という本を読み返していたら、ウクライナ戦争における今のロシアよりも、日中戦争当時の日本の方がはるかにダメダメだった2つの点が目に付いたので、今度はそこについて書いておこうと思いました。






1.軍部が勝手に戦争していて政府がそれを止められないのみならず、陸軍も全体を統括できず、推進派の将軍が勝手に作戦を行っている。

 今のロシアも、ワグネルの存在だとか、当初全体を統括する司令官が設定されていなかったとかありましたが、当時の日本よりははるかにマシだったろうと思います(T_T)




2.占領地を放棄して態勢を立て直した方が良いにも関わらず、「英霊に対して申し訳ない」という理由で占領地を寸土も放棄できない。

 今のロシアは、キーウの占領が無理だとなった後、そちらから全面撤退しました。あるいはまた、ヒトラーが「一歩も下がるな」と命令して戦争後半により状況を悪化させたことに関して私も「ああ、愚かしい……」と思ってましたが、日中戦争当時の日本軍も同じだったのですね(; ;)ホロホロ


 この件に関して、『図説 日中戦争』にはこのような記述がありました。

 それ行け、やれ行け、一撃すれば蒋介石は手を挙げるに決まっている、勇ましかった参謀本部の作戦課が、こうした“中南支放棄案”を作成するほど、ほんとうは困っていたのだ。【……】
 しかし、撤収案は陸軍省の反対で日ならず立ち消えとなった。一度占領したところを放棄するなどとは、とんでもないというのである。
 【……】阿南(惟幾。陸軍省)次官は顔面朱をそそぎ『君は部下を率いて戦場に立ったことがない。それだからそのような暴論を吐き得る。君には数万、数十万英霊に対する感謝も責任も持ち合わせはない。君の意見は一顧にも値しない』というのであった【……】“撤収するのは英霊に申し訳ない”という反論は、いわば殺し文句で、軍人はこれに弱かった。
『図説 日中戦争』P139

「この【撤収の】提案に対して、岩畔(豪雄。陸軍省)軍事課長から後刻もたらされた回答は『皇軍(天皇の軍隊)将兵の血を流した土地を手離せるか』の一言であって【……】
 あまりにも戦争賛美の思想・言論しか許さなかったから、戦争が拡大しきって収縮させる必要がある段階になっても、支持者がいないことに初めて気づいたのである。完全な世論のミスリードだった。
 陸軍は、すでに戦争のために戦争を戦っているにすぎなかった。“英霊のために”を根拠に戦いをつづけようとしていた。いや、戦わざるをえなかった。

『図説 日中戦争』P146



 実は個人的に、この二人に関してはかなり興味を持ってます。阿南惟幾は、終戦時に自決して陸軍のクーデタを防いだということで最も有名らしいのですが、日中戦争での軍事指揮官としての能力はどちらかと言えば低かったようで、実は今テストプレイされているOCS『長沙』(第一次長沙作戦)の時の軍司令官なのです。

 岩畔豪雄の方は様々な謀略で有名らしいのですが、私が興味を持っているのはビルマ戦線の第28軍(アラカン方面)の参謀長であったという側面です。OCS『South Burma』(仮)で、一番最後の1945年の撤退戦がシナリオ化可能なら、第28軍も出てくると思います……(OCS『Arakan』(仮)はどうも製作がかなり難しそうだという理由で放棄されましたので(>_<) →第1次、第2次アキャブの戦いは、OCSには向かない? (2022/06/27)




 それはともかくとして、この「はるかにダメダメだった2点」に関して思うのは、これは日本社会の特性から来る欠点なのじゃないかということです。


 日本社会は、ある程度狭い範囲の「空気」や対人関係(和を以て貴しとなす)が極めて重要で、同調圧力によって(本来あるべき指揮系統とは離れて)物事が推進されていきやすい。この「ある程度狭い範囲」が、戦前戦中であれば陸軍なり、海軍なりであって、縦割りで陸軍が勝手にやりたいようにやる。しかも陸軍の中でも細かく分かれて勝手にやったりする。

 「英霊に対して申し訳ない」というのも、空気こそが超重要で、空気の前には合理的判断などそれこそ「一顧の価値もない」ということでしょう。



 このような日本社会の各組織は、欧米でのような「機能のための組織」(ゲゼルシャフト)ではなく「人間関係のための組織」(ゲマインシャフト)という側面が非常に強く、うまくいっている間はものすごくうまくいくのだけど、うまくいかなくなってきてもどうにもそれまでのやり方を変えることができない……。

 欧米はなぜそういう社会でないのかというと、唯一絶対の神との契約だとか、そういう考え方に基づいているらしく、日本社会がそういう風になるのは将来においても難しいだろうと思うので、まあちょっとどうしようもないんじゃないでしょうか……。


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 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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