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OCS『South Burma』(仮)製作のために:前方(サルウィン川沿い)で防御すべきか、後方(シッタン川沿い)で防御すべきか

 『Burma, 1942: The Japanese Invasion』の巻末のまとめの続きです。今回は、「作戦的な観点」という項目から。



 ↓今回の記述に出てくる地名等です。赤い矢印が日本軍の最初の進撃路。東側の赤い□が「コーカレイ」で、西側が「モールメン」。川沿いの赤い破線が、東から「サルウィン川沿いの防衛ライン」「ビリン川沿いの防衛ライン」「シッタン川沿いの防衛ライン」。その西の緑の破線が「ビルマ公路」です。

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 英連邦軍は、自分たちが遭遇することになる戦いの種類に対して、まったく準備ができていなかった。それはあたかも、イギリス軍の戦列歩兵が18世紀半ばに北米のインディアンと荒れ地で戦った時の困惑を、より激しくしたようなものであった。ウェーヴェルはこう総括している(注11:1948年3月11日付ロンドン・ガゼット紙への回答(28段落目))。

私達は、今まで見たこともなかった戦争に直面していることに気付いた。その敵は、独立した指揮で機動性をもって戦うという大陸【中国大陸?】のモデルで完全に整えられ、規律正しく訓練され、しかも濃密なジャングルからいきなり白兵突撃をしてくるといった異例の戦術を駆使していたのだ。我々の部隊が回り込まれ、混乱に陥るのも無理はなかった。

 この戦いの期間中の作戦的な論争が、主に2つあった。一つは、第一段階での方針についてである。ウェーヴェルは、日本軍とはできるだけ前方、つまりコーカレイからモールメンの間、それからサルウィン川のラインで戦うべきだと命じ、ハットンも忠実にそれに従った。その根拠は優れたものだった。つまり、日本軍を遅滞させることができれば予定の増援をラングーン港経由で送り込むことができ、ビルマを防衛できるだろうというのである。また、この前方防御により、イギリス空軍は十分な早期警戒を行い、輸送船団を航空援護することができるようになる。

 しかし、日本軍が侮れないことに気付いていたスミス将軍にとっては、このような方針は賢明とは思えなかった。【前方防御の前線までの】距離は遠く、彼の兵力は少なかった。日本軍はどこにでも優れた部隊を集中させることができ、彼の部隊は必然的に一つずつ確実に敗北することになろう。そこで彼は、ビリン川まで撤退して初戦を行った後、ラングーンを守るための主たる戦いをシッタン川のラインで戦いたいと考えたのである。

 ウェーヴェルは理論的には正しかったが、実際には部隊の未熟さのため、前方での作戦はあまり成功しなかった。遅滞はほとんどできず、多くの損害が発生し、士気の向上にはつながらなかった。もしビルマ小銃大隊が【より向いていた】ゲリラ的な役割を果たすように訓練されていれば、もちろんもっと成功しただろうが。あるいはまた、もしウェーヴェルがジャワ島におらず【当時ウェーヴェルは東南アジア戦域全体を指揮しなければならなず、ジャワ島のABDA総司令部にいた】、ビルマ戦での現実をもっと身近に感じていたら、違った見解を持っていたかもしれない。

 第二の論争は、プロームでのこと【第二段階の序盤】である。ウェーヴェルは、攻撃的な作戦が日本軍に対して効果的であり、日本軍がラングーン港に陸揚げさせる増援によって増強される前に局面を逆転できるだろうと強く信じていた。これも理論的には正しかったが、両軍の相対的な戦力や、道路に縛られる英連邦軍部隊に対して日本軍が柔軟に攻撃を行えることをまだ理解していなかったのである。これがシュエダンでの敗北につながり、トングーでの中国軍の敗北とともに、ビルマ中部の運命を決定づけたのだった。
『Burma, 1942: The Japanese Invasion - Both Sides Tell the Story of a Savage Jungle War』P345,6


 「第二の論争」についてはまた今後検討するとして、今回は「第一の論争」のみについて。


 この「なるべく前方で防御」か「下がってから防御」かの論争は各種資料でも興味深く取り上げられており、印象としては「下がってから防御」するべきだったという意見の方がかなり優勢であるように見えます。

 一方で、ゲーム上では「下がってから防御」した方が絶対に良いのでは、ある意味面白くなく、よろしくないような気がします

 私はこれまで、「なるべく前方で防御」しなければならないように勝利得点で縛るしかないかなぁ……(例えばモールメンを早期に日本軍が獲得すると、日本軍に大きめの勝利得点が入るというように)と思っていました。しかし今回のブログ記事を書こうとしている過程で思いついたのですが、ゲーム上では「前方で防御か、後方で防御かを、プレイヤーは自由に選べるが、どちらの選択肢にもメリットとデメリットがあり、悩ましい」の方が遙かに良いなと。

 もしかしてそのようにできるかもしれないので、資料に書かれている「前方で防御」と「後方で防御」のメリットとデメリットを書き出してみようと思います。



◆前方で防御のメリット

・政治的意義。英領マレー半島とシンガポールの失陥が迫り、米軍がバターン半島で粘り強く抵抗を続けている中、英領ビルマで自ら土地を差し出すことは許されなかった。モールメンは重要な、ラングーンとマンダレーに次ぐビルマ第3の都市であり、これを失う感情的・士気的な痛手も大きいと考えられた。

・撤退が中国に及ぼす影響があまりにも大きい。

・ビルマ公路を日本軍に遮断させないことが重要なのだから、ビルマ公路からできるだけ日本軍を遠ざけておくべきである。シッタン川のラインで守る場合、シッタン川沿いに長く延びるビルマ公路が危険に晒され、あるいは一部占領されることもあり得る。これではビルマを守る意義の大きい部分が果たされないことになってしまう。

・日本軍がビルマ東部の航空基地を手に入れれば、ラングーンとそこへ向かう輸送船が爆撃圏内に入ってしまう。
【ただしこの件に関しては、モールメンのかなり南方の複数の航空基地は守れる見込みはなく日本軍が容易に占領しています。しかしそれらの航空基地は規模が小さく、よりラングーンからは遠いということで、モールメン周辺の航空基地が保持できるのであれば保持した方が良いということでしょうか。また、日本軍は輸送船団を爆撃してないかもしれないのですが未確認で、しているのかもですし、英連邦軍側としては爆撃の可能性が増大するだけでも脅威だったということはあるでしょうね。】

【あと、「ラングーン(等)への爆撃」に関してですけども、私は「ビルマ人への爆撃」的な捉え方をしていたんですが、そうじゃなくて「ビルマの都市部でビルマ人を支配・収奪しているイギリス人やインド人の邸宅や施設を狙った爆撃」であったとすれば、なるほどそれは今まで私が想像していたよりも有効に機能したかもしれない、と思いました。】

・時間を稼ぐことが重要だったので、できるだけ前方で防御して縦深を確保し、遅滞防御した方が良い。時間が稼げれば、ラングーンからモールメン方向に部隊を派遣させられるし、シャン州の防御を中国軍に引き継いで(兵站的、政治的に複数の障害があったが)そこにいた部隊も向かわせることができるだろう。

・初めからシッタン川沿いのラインで守ろうとすると、初期の少ない戦力では結局そのラインを守ることができずに、なし崩し的にその防御ラインを失い、結果としてすぐにビルマ公路どころかラングーンをも失う事態になりかねない。




◆前方で防御のデメリット

・初期時点で前方に置けている部隊が少なく、敵が優勢なので「敗北が一つずつ重なっていく」ことが確実である。

・サルウィン川沿いの防衛ラインは長く、日本軍の展開を捉えられない中、あらゆる場所に兵力を派遣しなければならないが、それができるだけの兵力がない。しかも主要地点を押さえておいても、日本軍はそれを迂回してくる。また、ビリン川は小河川なので長期保持するのは難しい。シッタン川の下流は、河口にあるシッタン鉄道橋を爆破してしまえば、充分な準備をしても渡河が難しいほどの大河である。中流にも橋がなく、充分な渡河準備が必要。

・補給路が長い。途中、シッタン川両岸には良い道路がない部分があり、マルタバン【モールメンの対岸の町】とモールメンの間は船でしか荷物を運べず、モールメンから東には良好な道路は存在しない。
【ゲーム的には鉄道輸送力を小さくし、輸送トラックや輸送ワゴンの数も少なくすれば、かなり苦労することになると思います。】





 うーん、割と純軍事的には、「後方で防御」した方が良さそうな気がします(^_^; 一方で政治的には絶対許容できなかった。ですからやはり、勝利得点で縛るのはした方がいいでしょうね……。

 今思いつくものとしては、

・ある時期より早くモールメンなりビリンなりを放棄すると、中国軍の守備地域から引き抜いて来た英連邦軍部隊が増援として得られなくなる。

・ビルマ公路の遮断が早い時期に起こると、日本軍側に大きな勝利得点が入る。


 とかでしょうか……。



 これまた今後も情報集積、検討継続ということで。


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Author:DSSSM(松浦豊)
 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

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