fc2ブログ

『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』読了&ジョミニはショック戦(機動戦・電撃戦)志向、クラウゼヴィッツは消耗戦志向?

 『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』を読了しました。





 読んでいる中で、ジョミニとクラウゼヴィッツの差が自分の中でよく分かった気がしたのが、収穫でした。今までも両者(とか)については色々記事で目に触れる機会があったわけですが、何が何だか全然分かってなかったので(^_^;(クラウゼヴィッツの『戦争論』についても、関係する本を色々読みましたが、中身についてはさっぱり理解できてませんでした

 ジョミニは、戦場外機動(大迂回機動)による影響を重視する大戦術【=作戦】を説き、クラウゼヴィッツは、相手の「重心」部分に対する直接打撃を重視する戦術と「戦略」【=作戦】を強調した。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P74

 つまり、彼【クラウゼヴィッツ】は、相手部隊に戦争を断念させるため、相手の兵員と装備を“連続的”に損耗させることを考えていたのだ。徐々に破壊・疲弊させる考え方を、われわれは消耗戦方式という。この消耗戦方式は、奇襲や精神的ショックの効果によって相手軍を“崩壊”に導くジョミニの戦場外機動戦方式と根本的に異なるといえよう。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P100


 全体として、ジョミニはショック戦(機動戦・電撃戦)志向、クラウゼヴィッツは消耗戦志向ということのようです(その後、大モルトケが、両者をバランスよくおこなうべきだとして統合したのだとか)。

 ショック戦については、OCSにおける真の「ショック戦」 (2016/07/17)をご参照下さい。消耗戦は、「火力によって敵を正面から撃破していく戦法」と言えるでしょうか。

 ジョミニが重視したものとして「戦場外機動(大迂回機動)」とありますが、OCSをプレイする上では完全に戦場外を機動するというわけではなく、広い戦場の中の敵が薄い所を狙ったり、あるいは連続する戦線のうちの一箇所なんだけども敵がそこを弱点だと認識していないところに突如突破戦力をぶつけて後方へ進出し相手にショックを与える……というようなことも、ジョミニの言うことに含まれるのではないかなぁと想像しました。

 クラウゼヴィッツが消耗戦志向だというのは、結局は敵戦力を撃破しなければ戦争に勝つことはできない、ということによるもののようです。ただ、クラウゼヴィッツが言う「重心」には後方連絡線も含まれる(こともある)らしく、その場合にはショック戦的なことにもなるのではとも思ったのですが、しかしまあジョミニとクラウゼヴィッツをやや誇張して差異区別するならば、そういうことになるようです(ただしこれは、この著者による見立てにすぎない可能性も。私も自分なりに再解釈してるわけですしね~(^_^;)。


 ジョミニの主張は、例えば……。

 相手の指揮官や兵士の心理に衝撃を与え、混乱させるのだ。混乱した心理状態は判断を誤らせ、感情(例えば、不安、恐怖心、疑心暗鬼)をコントロールできなくする。したがって、巧妙な戦場外機動は熾烈な戦闘に訴えることなく、相手に戦争の継続を断念させることができる。ジョミニは書いている。
「戦闘は一部の学者たちによって、戦争中最も重要かつ決定的意義を有するものであると説かれてきた。これは厳密にいえば誤りである。野戦軍が熾烈な戦闘を交えることなく、戦場外機動によって敵を敗退させることもある」と(注1:Baron de Jomini, The Art of War, trans. G.H. Mendell & W.P. Craighill, 1862, p.131)。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P78,9

 しかし、ナポレオン戦争の経験から、兵站業務は著しく複雑で、高度の技能を必要とする、とジョミニは考えた。ナポレオン戦争では、十数万にのぼる巨大な野戦軍が複数の「軍隊キャンペーン」や複数の戦闘を生起させ、しかも野戦軍の運用原則が分散した接敵機動になった。その上、ナポレオンは交戦部隊の補給に現地調達方式のみならず、追送方式(隷下の下級部隊に必要な補給品を送り届けさせる方式)も採用したため、策源地(兵士の召集や軍需品の生産にあたる地域)や補給処から戦場への補給品の“継続的な流れ”を確保する必要があったのだ。
 ジョミニはこのことから、兵站業務の問題が野戦軍の運用方策に大きく影響するという認識を持つに至った。かつて、兵站業務は「軍隊キャンペーン」を遂行するにあたっての“環境上の一要素”にすぎなかった。しかし、今や、それがなくてはならないものになったのだ。したがって、「彼は兵站業務に関する重要事項を“司令官たち”の主要な考慮要素とみなした。例えば、「補給処を設置すべきかどうか」「設置するなら、どこに設置すれば良いか」「後方連絡線(策源地や補給処と、戦場を結ぶ交通路線群)をどこに求めるか」等が「軍隊キャンペーン」計画の構成要素に含められるべきだ、と説いた。
 さらに、ジョミニは、後方連絡線の確保に必要な部隊の保持も兵站業務に含めた。彼は「戦争の基本原則のらちの一つは、自らの後方連絡線を危うくすることなく、敵の後方連絡線に大量の交戦部隊を投入することである(注4:同上、Jomini, p.52)」と書いて、後方連絡線の防護または切断を物理的撃破よりも重視した。このため、“闘う兵站部隊”としての業務を兵站部隊に付与し、後方連絡線の確保・維持にあたらせることを主張したのである。

『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P82,3


 これらはショック戦(機動戦・電撃戦)志向であるOCSに非常にあてはまることだと思いました。OCSでは他のボードウォーゲームに較べて非常にショック戦が起こりやすい(起こしやすい)ですし、補給集積所をどこに設置するかだとか、後方連絡線を守るためにユニットを置いておく、あるいは逆に敵の後方連絡線を狙うことが極めて重要です。そしてショック戦を起こすことにより、OODAループ上で敵の判断(力)を後手後手にまわらせることが可能なのです(ただし、ショック戦を起こすために無理をしすぎて、その後に自軍が自滅するというようなこともあり得ますから、ホントにバランスが重要ですし、また、ショック戦を起こしやすいと言っても、その絶好のチャンスというのはやはり限られており、いつでもどこでもお互いショック戦をしているわけではないのですが(^_^;)。


 大モルトケ以降、現代以前の作戦方式について、本書にはこうありました。

 モルトケ以降、ベトナム戦争に至るまで、作戦の進化を見てみると、大別して米軍の消耗戦方式、ソ連の縦深作戦方式、リデル・ハートの間接的アプローチ方式の三つがあった。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P114


 米軍が南北戦争でのグラント以降、ベトナム戦争に至るまでをずっと、消耗戦方式で戦っていた、という話は大いに「おお~、そうだったのか」と思い、かなり参考になりました。

 ソ連軍の縦深作戦方式なんですが、「戦線にも、敵後方の浅いところにも、敵後方の深いところにも、同時に打撃とショックを与えて敵を完全に麻痺させる」というのは、私は以前から「そりゃそれが理想的には決まってるけど、そのためには戦力も補給物資も大量に必要で(作戦能力はおいておくとしても)、そこらへんどうなの?」と思ってました。が、同書を見てると、

 東部戦線の転換点とされる「ウラヌス作戦」(1942年11月)と、それに続く「バグラチオン作戦」(1944年6~8月)および「ヴィスワ・オーデル作戦」(1945年1~3月) がそれである。特に「ヴィスワ・オーデル作戦」において、ソ連軍はドイツ軍の第一線陣地を突破し、縦深600キロメートルまで到達した。縦深奥深くまで攻撃されたドイツ軍は、無秩序、混乱、ショックに陥り、物理的・精神的結合力を喪失した。結果は、それぞれの作戦で28~35個のドイツ軍師団が打倒された。これらの勝利は巧妙な作戦の成果であり、単に“強大”な兵力の産物ではなかったといえよう。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P141,2


 とあって、私は「そうか、縦深作戦は独ソ戦の最後の最後の段階で大いに成功したけども、それまではやはりそこまでの戦力、補給も足りなくて、徐々に縦深作戦の規模が拡大されていったということなんだな……」と思い、得心がいきました。ウラヌス作戦はOCS『Enemy at the Gates』『Case Blue』で追体験できますが、OCSバグラチオン作戦(フルマップ4枚)は恐らく開発計画にはあると思われるもののまだ製作が始まっているかどうか分からないですが、期待してます。


 一方疑問なのは、「じゃあドイツ軍が第二次世界大戦でやったのは、何なの?」ということなんですが、それが「リデル・ハートの間接的アプローチ方式」なんでしょうか(そこらへん何も書かれてませんが)。当該の第7章は「フラーとリデル・ハートの士気喪失作戦」となってまして、『機動の理論 勝ち目をとことん追求する柔軟な思考』という本では、グデーリアンなどはフラーの影響を受けたという風に説明されています(しかし、『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』では、ドイツ軍との関連は一切書かれていません)。



 ジョン・フレデリック・チャールズ・フラーリデル・ハートも共にイギリス人で、イギリス軍には影響を与えなかったのですが、第二次世界大戦のドイツ軍に影響を与えたと言われているようです(複数の本やネットによると)。ただリデル・ハートに関しては、戦後になってから「ドイツ軍は私の理論をマネしたのだ。そしてそれが実際に有効だったのだ」と喧伝して、それで有名になったのだが、実際にはフラーの影響はあったが、リデル・ハートの影響は言うに足りないものだった……というような説もあるようです(どこで見たか思い出せませんが……)。

 ただまあ、例えば以下のようなリデル・ハートの言説は、OCSをプレイする上でも参考になるなと思いました。

 「どのような機動経路を経て、戦車部隊を相手の後方地域に送り込み、どのように運用すべきか」が、「戦略(*作戦)」司令官にとって重要になってくる。それは「奇襲と運動性を通して達成される」とリデル・ハートはいう。
 リデル・ハートは相手の最小予想経路に沿って、戦場外から回り込むことで“奇襲”しようとした。「敵の立場に立ってみることに努め、敵が先見しまたは先制することが最も少ないコースはどれであるかを考えよ」。この際、相手の戦場の背後に、迅速にしかも奥深くまで移動できれば、それだけ安全である。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P156


 OCS『Tunisia II』『KOREA』なんかをプレイしていると、地形が複雑でユニット数が少なめなので、戦場の中(外ではなく)に「敵が予想しない(であろう)」進路がある時いきなり(脳内に)見えてくることがあります。すると作戦計画を考えるワクワクがすごいことになるものの、大体において使用できる兵力や補給が潤沢でないので、実行しても効果は思ったほど上がらないのですが(^_^;、しかし常に予備部隊と予備の補給を置いておけば、チャンスがいきなり見えてきた時にそれを投入できる……ということかもしれませんね。


 この本の中で最もOCSにぴったりだと思ったのは、以下の部分でした(マッカーサーの仁川上陸作戦が機動戦であったかどうかの文脈で)。

 ……重要なのは、【相手の】強さよりも、むしろ相手の弱さを攻撃し、【自軍の】火力よりも、むしろ機動を使うことである。つまり、相手交戦能力の物理的な破壊よりも、戦場外機動による脅しを使うことだ。
『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』P125



関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

今までの訪問者数(2011/9/17以降)
プロフィール

DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ボードウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、第二次世界大戦やナポレオン時代関係情報を集積したりしてます。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイしたり、VASSALでOCSをオンラインプレイしたりですが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! VASSALでのオンラインインストも大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

 ブログで書いた物のうち、

 OCS関係の記事は

「OCSの物置2」



 戦史物の記事は

「戦史物の物置」


 で、アクセスしやすいようにカテゴリ毎にまとめてありますのでそちらもどうぞ。

Twitter
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
オススメ本
バナーで応援コーナー
ぜひ見て頂きたいページへのリンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR