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第二次世界大戦時、騎兵を敵後方へ送り込むというドクトリンを持って(持てて)いたのはソ連軍だけだった?(付:OCS『The Blitzkrieg Legend』)

 『Soviet Cavalry Operations During the Second World War』を第3章まで読みました。英文がかなり読みやすくて、面白くて、非常にいい感じです。




 同書によると「騎兵を敵後方の兵站線への打撃に使う」という戦法は、鉄道線が発達して後方連絡線の重要性が非常に高くなった南北戦争の時に、南軍側が主にやり始めたそうです。その指揮官としてはフォレスト将軍が代表的なようです。かつて旧GJ59号P17で、私は記事に「「あの悪魔のフォレストは、10,000名の損失と国庫の破滅を招いても追い詰めて殺さねばならない」とシャーマン将軍をして言わしめた……」と書いていたのですが、これはそういうことのためだったんですね。今更になってようやく深い意味が分かりました(^_^; この戦法は、ゲーム上でもやられる側は本当にたまりませんから……。

 で、当時のロシア軍はこの騎兵による機動戦戦法に注目し(ロシアの地形や気候的にも合っていたからだとか)、その後第二次世界大戦の時代にもソ連軍は騎兵を機動戦力として使用していく(と同書でなるはず)わけですが、他の国はそのような戦法にほとんど興味を示さなかったのだとか。

 ヨーロッパ列強はアメリカにおける南北戦争のこのような教訓に、ほとんど注意を払わなかった。……騎兵は依然として、光り輝く武器(剣や槍、ピストルなど)で混乱した歩兵や砲兵に突撃するだとか、騎兵同士の戦いなど、伝統的な使用のされ方をしていたのである。
『Soviet Cavalry Operations During the Second World War』P16



 ソ連を除く列強諸国は騎兵を時代遅れなものと見なし、順次それらを装甲車部隊や戦車部隊に転換していっており、まだ残っている騎兵部隊に関しては偵察部隊や遅滞防御部隊、後方守備任務、あるいは移動力が高くて戦線を穴埋めするのが迅速に可能な部隊として運用として使用したようです(ドイツ軍は、オランダ低地やプリピャチ湿地帯などの困難な地形を進むのに使った感があります)。




 ところがOCSには、尼崎会で「騎兵問題」と呼ぶ「騎兵強すぎじゃね?」問題がありまして……。

 というのは、騎兵ユニットは移動力が高めなのに、徒歩移動(移動力コストが最も低く、敵ZOCを無視できる)で、しかも燃料がいらないので、予備モードになって補給チェックをやり過ごせば拡張フェイズ(突破フェイズ)に全移動力で敵後方の鉄道線などを踏みに行ける上、次の補給チェックに生き残れれば戦闘モードになってまた少し(燃料なしで)移動して座り込む……ということができてしまうのです。

 ただこれは、どうもソ連軍がこれをやることに関しては、『Soviet Cavalry Operations During the Second World War』からしても「あり」なのでしょう(また同書を読んでOCS上でも色々検討していきたいと思います)。しかし以前から我々を非常に悩ませているのが、『The Blitzkrieg Legend』でフランス軍がこれを大規模にやるという戦法の存在です。

 その例→『The Blitzkrieg Legend』南方、騎兵集団をどうするか…… (2014/10/26)


CIMG1805.jpg

 ↑その様子。


 しかも『The Blitzkrieg Legend』の場合、スケールが通常(5マイル、3.5日)より細かくなっている(3マイル、2日)せいか、東部戦線よりも細かい部隊までがユニット化されていて、うじゃうじゃと騎兵ユニットが大量にいるのでさらに厄介です。細かい騎兵ユニットを総ざらえで集めてきて、戦線に一点穴を穿てば、中障害地形であるアルデンヌの森の中の10箇所以上に騎兵ユニットをばらまくこともできます。これをやられたらドイツ軍はもうどうしようもなくなって、手を挙げるしかないと思われ……。


 しかし、『Soviet Cavalry Operations During the Second World War』の前記の話からすると、当時のドクトリン上、ソ連軍はそれをやれるわけだけども、フランス軍にはそれはできないのではないでしょうか? ただOCSは、「材料を精密に用意して、これぐらいかなという特別ルールは提供する(もしさらにルールをいじりたければどうぞ)」という姿勢のシリーズなので、そういう縛り(ヒトラー命令とかスターリン命令とか、政治上の問題とか、ドクトリン上の問題とか)はほとんど入ってないのです。例えばスターリングラード戦の場合でも、スターリングラードから撤退してはならないというヒトラー命令なんかは『Case Blue』とかで全然ルール化されていないので「もしヒトラー命令がなければ?」という、いわばIFの状況でプレイされ、それはそれで楽しいのですが、もし「ヒトラー命令がある中でどうなるか、どうできるかをプレイしたいのですが……」という場合には、ハウスルールを追加する必要があります。

 つまり私が思うに、『The Blitzkrieg Legend』の場合でも、「もし当時のフランス軍が、騎兵部隊を敵後方に送り込むというドクトリンを採用できていたら?」というIFの状態を楽しむのであれば、素のルールのままで構わないわけですが、ドクトリン上できないハズだったものは、それを縛るルールを入れた方がいいのではないか……と。

 フランス戦当時のドクトリン的な問題としては、もう一つ、黄色作戦当時に連合軍がものすごく「戦線維持重視」だったという話もあります。ところが、ダンケルク戦の後には、連合軍はこの戦線維持重視ドクトリン?を変更しているのです。

 このころ【1940年5月の対フランス戦役でダンケルクの戦いが終わった後の、第二段階「赤の場合」の時期】になると、フランス軍は、従来のように戦線の維持を重視するのではなく、森林や村落を拠点として、縦深的に抵抗する戦術を採用していた。それゆえ、ドイツ軍は、5月20日よりフランス軍総司令官になったマキシム・ウェイガン大将にちなんで、「ウェイガン線」と呼ばれた防衛線を突破するのに手こずった。
『「砂漠の狐」ロンメル』P145


 初出エントリはこちら→大木毅さんの『「砂漠の狐」ロンメル』読了 (2019/05/15)



 これに関しても『The Blitzkrieg Legend』は縛りがないため、ダンケルク戦以前であるのに、フランス軍は「縦深的抵抗戦術」を使用できますし、当時ソ連軍しか使用していなかった「騎兵による敵後方への浸透戦術」も使用できるわけです。いわば、他国や未来の知識(ドクトリン)を先取りして戦うことが可能だという状態……?

 ただこれは、OCSが精密で自由度が高く柔軟で、選択肢が恐ろしく広く取れるゲームであるからこそ起こることだとも思われ、他のゲームであればできないようなことができてしまう、「高性能であるがゆえの憂鬱」みたいなことかとも思います(^_^;


 しかし問題の根幹がここにあるのだとすれば、『The Blitzkrieg Legend』のフランス軍のみにハウスルールで「ドクトリン的縛り」をかければいいわけで、騎兵問題の解決のためにOCSのシステム自体をいじる必要はなくなるわけです。私はこの考え方は結構良いのではないか……と思ったのですが、どうでしょうかね……?




 ちなみに、南北戦争で「騎兵を敵後方へ送り込む」という戦法を発見した当のアメリカ軍(南軍)ですが、それに対抗するために北軍のグラント将軍が、自軍鉄道線周辺の占領地域を面で侵食していき、敵に消耗戦をしかけるという方法で勝利したためもあって(それだけが理由ではないですが)、その後もアメリカ軍は機動戦志向ではなくて消耗戦(圧倒的物量でもって安全を確保しながら正面から敵を撃破していく)を採用し続けて第二次世界大戦でもそれで戦った……というようなことが、並行して読んでいる『「作戦」とは何か 戦略・戦術を活かす技術』に書かれていました(第5章 米軍の消耗戦方式 - 封印された作戦の概念)。機動戦指向のパットンが異端だったわけですねぇ……。あるいは、『補給戦』の西部戦線の章にもあるように、当時のアメリカ軍は消耗戦指向すぎて、もうちょっとバランスよく機動戦も考えていれば、もっと勝てたのではないかとも……。しかしそれが、ようやくベトナム戦争後に「エアー・ランド・バトル」という、機動戦を重視する戦法に変わっていく……。




 いやちょっと待てよ、じゃあOCS『Beyond the Rhine』でアメリカ軍が機動戦重視で戦ったならば……! あいや、同ゲームには「広正面戦略」ルールというのがあって、補給物資を3つの戦区に平等に割り振らねばならない(ただし時期はある程度限定されてたり、条件があったりする)、というのがあるので、それはできないようになっているか……?(^_^;

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DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ウォーゲームの中でも、OCS(Operational Combat Series)だけをひたすらプレイしたり、関係情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになってますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! 見学だけ等も大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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