『GJ67 激闘!タイフーン電撃戦』とモスクワ攻防戦資料、及びOCS『Guderian's Blitzkrieg II』について

 『ゲームジャーナルNo.67 激闘!タイフーン電撃戦』が発売され、送られてきました。


 ↓公式ページ

ゲームジャーナルNo.67 激闘!タイフーン電撃戦



 今回私は、戦史概説記事とリプレイを書かせてもらいました。

 戦史記事は色々な本を参照して書いたんですが、特に参考にしたのは『モスクワ攻防戦――20世紀を決した史上最大の戦闘』とオスプレイの『Moscow 1941: Hitler's First Defeat』です。





 『モスクワ攻防戦』の方は、特にスターリンについて詳しく扱われていて興味深かったです。ソ連の市民についてや外交面での話も多いです。Amazonで古本が安く買えるのでオススメかと。

 オスプレイの方は詳しめの作戦的な記述が個人的にツボにハマって、ものすごく面白かったです。英語的にも読みやすかったですし地図も多くはないですがいい感じです。付録ゲームの『激闘!タイフーン電撃戦』をやるなら今回の戦史概説記事程度でOKかと思いますが、OCS『Guderian's Blitzkrieg II』とかGMT『Typhoon!』をもしプレイするのであれば、ぜひ購入して目を通して欲しい著作かと思いました。



 地図に関して言えば、『モスクワ防衛戦―「赤い首都」郊外におけるドイツ電撃戦の挫折』にある2枚の地図が恐ろしくかっこよくて分かりやすいです。



 ただしこの本はモスクワ攻防戦に参加したソ連の戦車部隊に関してのみ詳述した本なので、この本ではモスクワ攻防戦の全体像はまったくさっぱり分かりません(^_^; マニア向けの本だと言えるでしょう。



 あと、『電撃戦〈上〉グデーリアン回想録』も、ドイツ軍部隊名やその動きに関して相当詳しく、地図もけっこういいです(マンシュタインの『失われた勝利』が部隊名や地図に関してやや残念なのに比べて)。もちろん、グデーリアンが当時感じた焦燥や、ヒトラーとの対話、クルーゲとのやりとりなども詳しく触れられています。






 実は今回の号でOCS『Guderian's Blitzkrieg II』の記事が載せられないか聞いてみたのですが、すでにページが埋まっているとのことでした(^_^; 割と直近になって聞きましたし、もっと前から準備していれば……。



 『激闘!タイフーン電撃戦』も面白いと思いますが、さらに詳細で大きめなゲームに興味を持たれたら、ぜひ『Guderian's Blitzkrieg II』も視野に入れてみて下さい。古角さんによると、日本でこれまでに売れたOCSゲームの中でも一番数が出たのではないかということだったので、少なくとも所有率は高いのではないかと……。

 『激闘!タイフーン電撃戦』では1941年10月から42年1月までを続けてやります(12月で終わる可能性もあります)が、『Guderian's Blitzkrieg II』には10月1日(9月30日)からのシナリオ、11月15日からのシナリオ、12月5日からのシナリオ、42年1月8日からのシナリオも存在しており、もしやろうと思えば43年春までずーっと続けてプレイすることもできます。ウクライナでおこなわれたウラヌス作戦と同時期におこなわれた「ジューコフ最大の敗北」と言われるマーズ作戦もプレイできます。

 尼崎会でとりあえず10月1日から12月1日ターンまでプレイしてみたのですが、今までOCSでウクライナ地方をプレイしていた時には平地ばかりで「何をどうしていいか分からない」傾向があったのに対して、地形が森や川などでやや複雑で、やるべきことやできそうなことが若干はっきりしており、非常にプレイしやすい印象を受けました。

 プレイも、序盤は劇的なほどの電撃戦と複数の包囲戦となりますが、中盤は泥濘でプレイ的にも中休みとなり、終盤で最後の努力という分かりやすさ、プレイしやすさがありました。

 もちろん、マップすべてでプレイしようと思えば、フルマップ4.2枚(フルマップ3枚+フルマップ0.4枚×3)の空間が必要で、ほぼ必然的に置きっぱなしプレイとなり、できれば人数もいた方がいいでしょう。


 思いつく欠点についても触れておけば、フルマップ1枚や1枚半でできるシナリオは「通して」やろうとするとあまり出来が良くないような気がします(あくまで個人の感想です)。というのは、ブリャンスク包囲環を成立させるために、すべてのマップを使ってプレイした場合には無理をしなくても包囲環が作れるのに、1枚とかでやるとルール上「歩兵師団を包囲環の東側に持っていって、マップ端から5ヘクス以内に置く」というようなことが必要で、相当無理をしないとうまくいかないように思われるのです。ので、もし1枚とかでやるなら、「大体史実通りに装甲部隊でもって片翼包囲できたら、もうそれでブリャンスク包囲環は成立している」と見なすようにした方がいいと思います。

 上記のように考えてプレイすれば、最初の数ターンを何度も練習するために、マップ1枚とかのシナリオは全然使えると思います。

 あと、すでに過去に何回か書いてましたが、『Case Blue』のユニットがいくつか必要です。ただし入手方法が複数あり、自作も容易に可能なデータが公開されています。また、次のOCS『Smolensk』に訂正ユニットが付く可能性もあります(→OCSエラッタカウンターの件と、OCS『Smolensk』は6月頃発売、他 (2018/03/20) )。

 それから、ルールが改訂されたv2.04というのがあるのですが、今公式HPでは公開されていない……?(必要な方は連絡下さい) 一応新しいものでプレイした方がいいと思われますが、アエロサンのルールが新しい方には見つからない(っぽい。古い方にはある)など、欠点がないわけではないようです。



 しかし、今まで割と色々なOCSタイトルをプレイしてきました(やってないものも多いですが)が、ゲーム自体のプレイのしやすさと面白さにかけては、『Guderian's Blitzkrieg II』はもしかして随一ではなかろうかという気がしています。ぜひ多くの方にもプレイして欲しいです。

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最近買った本『ブラッドランド』『枢軸の絆』『世界史を動かした脳の病気』など

 最近いろいろ本を買ってしまってます。せっかくなので、ミリタリーに関係するような本を紹介したいと思います。



 ↓『ブラッドランド』

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 以前、東部戦線のナチス・ドイツ軍兵士の蛮行や残虐性について (2017/07/17)で書いてました、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド等で、ヒトラーのみならずスターリンも、第二次世界大戦前の時代から大虐殺をおこなっており、その死者が総計1400万人にも及ぶということを描いた本です。

 「図書館で借りるつもり」と書いてまして、先日ようやく最寄りの図書館に行ってきたんですが上巻しかなく(下巻は貸し出し中だった?)、ある程度じっくり見てみた感じ、良さそうでもあったし重要な本であろうとも思ったので、買うことにしました(古本で)。


 今までに読んだ本の中で、純軍事的なこととは少しずれるものの重要だと思える本として、『戦争における「人殺し」の心理学』、『補給戦』、『戦争と飢餓』などがありましたが、この『ブラッドランド』もそういう本なのではないかと思っています。
 







 ↓こちらは本屋で新刊で見つけたもの。

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 『枢軸の絆』は、ハンガリー、ルーマニア辺りは個人的に非常に興味のあるところですが、それ以外にもベルギーやオランダが取り上げられているのが面白そうだったり、ロシア人(モスクワ攻防戦でも活躍したアンドレイ・ウラソフ)による「ロシア解放軍」とか「RONA(ロシア国民解放軍)」(OCS『Guderian's Blitzkrieg II』にユニットが4つ出てきて、パルチザンの攻撃を防いでくれる)とかも扱われていて(もちろん他にも色々扱われている)、面白そうだと思いました。


 『世界史を動かした脳の病気』の方ですが、以前『The Hussar General』をやっと完訳 (2014/03/27)で書いてましたプロイセン軍のブリュッヒャー元帥の非常に強い躁鬱的な症状であるとか、1810~1820年のイギリス (2014/03/30)で書いてましたナポレオン戦争時のイギリス国王であるジョージ3世の「おしゃべりが止まらない」などの精神異常が「先天性のポルフィリン代謝異常症」という病気であるとか、歴史上の人物の患っていた病気に関する学問があるらしいのですが(今検索してみたんですが分かりませんでした)、そういうのに興味を持っていたので「おっ、これは!」と思って買ってみました。

 ミリタリー的な話としては、有名なヒトラーのパーキンソン病、それにリンカン大統領やグラント将軍の偏頭痛、第二次世界大戦の時のイギリス海軍のトップであったパウンド卿の脳腫瘍とか、あるいはジャンヌ・ダルクの側頭葉てんかん(てんかん発作で神秘体験をするということに関しては他の本を読んで知っていました)とか、他にも色々な歴史上の有名人について扱われているようです。こういう視点については、もっと世に知られるべきではないかとも思ってます。








 そこらへんにちょっと関係があるかもしれない話として、最近特に興味を持って本を買って読んでいっている領域として……

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 『まんがでわかる隣のサイコパス』は、なんか非常に分かりやすそうだったのと、「もしかしたら私はサイコパスなのかも?」というちょっとした疑念があって、本屋で見つけて買ってみたものです。マンガに出てくるサイコパスの人たちはなんか怖いのかなと恐る恐る読んでいったんですが、別にそんな怖いことはなかったです。

 この本によるとサイコパスに当てはまると考えられる人は、例えば「自己の利益のために人をだます」「衝動的で計画性がない」「けんかや暴力を伴う刺激性を求める」「責任感がない」「良心の呵責がない」などの特徴のうちのいくつか(2~3個とか)を持つのですが、その特徴の持ち方は様々なパターンがある、と。だからサイコパスといっても色んな人がいる。

 しかも、サイコパスの人は上昇志向が強くて、エネルギッシュで、社交性に優れた人も多いので、社会で成功している(世の中を良くしているし、回りの人との関係も良好である)人も全然多いらしい。例えばウォールストリートの成功者のサイコパス比率は一般的な比率の何倍も高いらしいです。

 ちょっと思ったのは、ヒトラーやスターリンやナポレオンもサイコパスなんじゃないか、と。彼らもある意味成功者ですし、そして彼らの良心の呵責のなさといったらものすごいものがあります。ただ、ちょっと検索した限りではそういう説はヒットしませんでした(どなたかご存じなら教えて下さい)。

 ちなみに「もしかしたら私はサイコパスなのかも?」の件ですが、一般的なサイコパスとは私はかなり異なるようです。が、サイコパスは脳の共感性を感じる部分の働きが弱いらしいのですが、私は共感性の部分は通常っぽいですが、愛情(あるいは親愛の情)を感じる部分の働きが生まれつき?非常に弱いのではないか……と思いました。ううーむ。良く分からないですが、すごく参考にはなった気がします。



 『高学歴モンスター』の方はちょっと前に出た本で、気にはなっていたものの買わないでいたのですが、今回、日大アメフト部の件などで「地位の高い人たちがどうやって踏み外して失敗するのか」に非常に興味が湧いてきたので買ってみました。

 この本は「ナルシシズム(自己愛)」が原因だという見方で一貫して書かれているのですが、私は、「サイコパスの人が成功して、ナルシシズムとなって、しかし共感性の低さなどから踏み外してしまう」というような「サイコパス」と「ナルシシズム」の合わせ技が起こっているのでは? と思ったり。とりあえず日大の田中理事長や内田前監督はそうじゃないかなぁ……。


 で、これらの本を読んで思い始めたのが、私は例えば競争的なのがすごい苦手だったり(だから勝敗を競ってゲームするのは好きでなく、研究プレイ的なのが好き)と、いわゆる「出世」するような人間ではないよなぁ、と。むしろ、ナルシシズム性が強くて、サイコパスだったりする人の方がよほど世の中で出世して、踏み外しさえしなければ富を得て悠々自適になるのではないか……?

 なんかそういうことを扱った本はないのかなぁと思って探していたのですが、それらしき本が最近の新刊で文庫で出ているのを今日本屋で発見しました。『悪いヤツほど出世する』です。

 まだパラパラ見ただけなんですが、まあ「リーダーになるためには悪いヤツになっていいし、なるべきなんだよ」というような本じゃないかなとも思いますが、それはそれとして、色々参考になればなと思います。




OCS『Guderian's Blitzkrieg II』レッドタイフーンセットアップ

 ワニミさんと拙宅(尼崎会)で、OCS『Guderian's Blitzkrieg II』の1941年12月5日ターンからのキャンペーンシナリオ(いわゆるソ連軍によるモスクワ冬期反攻、レッドタイフーン)のセットアップをしてました。



 ↓西からの全景。

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 モスクワ北面の拡大マップが元々付いており、それを写真左上の方に置いて、そちらにセットアップしています。




 ↓北方。

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 写真のやや右下の辺りがルジェフ(Rzhev)で、その右上にはカリーニンがあり、ある程度の兵力がにらみ合ってます。




 ↓モスクワ北方。

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 写真の左の戦線で、ドイツ軍の戦線に穴が空いているところがあります(クリン:Klinと文字が書いてあるヘクスの左のヘクス)。ここからソ連軍に侵入されて司令部が踏まれたりするのは必至かと……(T_T)




 ↓モスクワ南方からトゥーラにかけて。

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 戦線がぐわーっと続いてますが、写真右上の方になるといきなり戦線がスカスカに……。




 ↓トゥーラからヴォロネジにかけて。

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 こちらは本当に戦線がスカスカです。




 で、これまでの我々の10月1日から12月1日ターンまでのプレイで最終的にマップ上に残っていたステップと、12月5日からのシナリオでマップ上に配置されているステップ数を数えて比較してみました。


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 ドイツ軍側は、装甲と歩兵に関しては史実以上に保持していたと言えますが、まあ誤差の範囲とも言えるでしょう。砲兵と司令部は史実より失っていますが、それほど大きな差異ではありません。しかし戦闘機は大きく失っていたと言えるでしょう。

 ソ連軍側は、戦車、歩兵・騎兵、司令部などについて、史実以上に失いすぎたと言えるのかもしれません。プレイを修正できる可能性がある点としては、我々のプレイではビャジマ・ブリャンスクポケットが形成されるとその最初のターン目に脱出(最初のターンならば半分の確率で、1D6ターン後に増援として帰ってくる。2ターン目以降は成功率が1/3に下がる)をかなりやっていたのですが、それでまず半分は帰って来ないわけで、もっとポケットの中の兵力をマップ上でもって歩いて脱出させるようにすべきなのだろうか、という話になりました。また、その他のプレイにおいても、戦力をもっと大事にすべきなのかもしれません。

 ただ、我々のプレイにおいてはソ連軍(ワニミさん)は最終的に、反攻のために73SPを保持していたそうなのですが、12月5日のセットアップではマップ上に103SPがあり、しかも建設に1レベルにつき2SPも消費する陣地が大量に溢れていて、「本当にこんなこと(プレイ)が可能なの!?」という疑念も(^_^; 他のことはともかくとしても、陣地に関しては他のゲームの時期の異なるシナリオを見て「存在するSP的にありえないんじゃ……?」と思うことはあります。


 さて、今後のプレイですが、今までは松浦方式(片方の軍を全プレイヤーでプレイし、その敵軍は違う戦区で全プレイヤーでプレイする)でやっていたんですが、そうすると作戦上の秘密保持が難しく、「騙し合い」のプレイにはなりにくいということもあり、通常のプレイでやってみることにしました。時間はかかりますが、待ち時間中はノートパソコンで翻訳したりで作業するということで解決を。

 ワニミさんがソ連軍、私がドイツ軍を担当します(ワニミさんはドイツ軍をやると、「何でもできすぎて何をやったらいいか分からない」「編成が複雑で分かりにくい」とかでしんどいそうなので、今後基本的に私が常にドイツ軍をやることになりそうです)。


 もちろん、観戦、プレイに参加等、大歓迎ですので、お気軽にお声がけ下さい~。

OCSユニットで見るスピットファイア

 多分2012年に新刊で出た時に買って読んだ『アダプト思考 予測不能社会で成功に導くアプローチ』という本を読み返していた時に、その中でスピットファイアの開発について書かれているのに気付きました(当時はOCSもやってなくてスピットファイアに馴染みもなく、読み飛ばしていたのだと思います)。




 ↑今回探してみたら、古本しかなくて最安値が4900円だというのにびっくり。経営戦略本として「何が成功するかは事前には分からず、試行錯誤が大事だと考えるべきなのだ。だから、良さそうなものはとりあえずどんどんやってみて、ダメそうなやつはやめるというようなアプローチを取るべきだ」というような内容なのですが、グーグルなどの超優良IT企業なんかも採用して成功している戦略なので、希少本となったんでしょうか。この本の中の、イラクでラムズフェルド国務長官の一見正しそうにしか見えない戦略がまったく通用せず、現場の下級将校らの試行錯誤によって状況が改善されていくのは圧巻で、そこらへんのことは↓の本でマンガで読めますから、こちらも非常にオススメです。





 さてさて、スピットファイアについてですが、OCS上でメッサーシュミットBf.109やフォッケウルフFw.190とタメをはる(主に)5-1という強さで、連合軍を担当した時にはホントに頼りになります。

 『アダプト思考』で恐ろしく印象的だったスピットファイアに関する記述はここ。

「スピットファイアは完璧な航空機だった」と、あるパイロットは語る。カリフォルニアからイギリスに渡ってイギリスに入隊したパイロットも口をそろえる。「どうしてこんなに飛びやすくて扱いやすいのか、こんなに戦える戦闘機があるのかと驚いたことは、一度や二度ではなかった」。「スピットファイアのすばらしさは言葉では伝えられない。史上最高の航空機だった」。別のパイロットはこう賞賛した。
 スピットファイアを高く評価したのは、同機のパイロットだけではない。ドイツ空軍のトップ・エースパイロット、アドルフ・ガーランドは、ドイツ空軍総司令官のヘルマン・ゲーリングに、イギリスの頑強な抵抗を打ち破るためにはなにが必要かと訊かれて、「スピットファイア部隊を所望します」と即答した。別のドイツ空軍エースパイロットは不満をこぼした。「やつらは悪魔のように急旋回できる。撃ち落とせる可能性なんてありそうにない」
『アダプト思考』P121


 しかし、ハリケーン派についてこのような注釈が付いているのも個人的に非常に好印象でした。

 ハリケーン支持派はいまもスピットファイアばかりが賞賛されすぎていると不満をもっている。ハリケーンは低コストで製造しやすく、空戦性能が高いため、ブリテンの戦いの初期に投入された機数はスピットファイアよりも多かったのだが、絶賛されたのはスピットファイアの設計だった。
『アダプト思考』P123



 なぜ『アダプト思考』でスピットファイアが取り上げられているかというと、スピットファイアが「見込みがない」と思われていた試作機案であったのにある進取の精神に富む将軍が自分の権限で「非常に興味深い実験機」として発注し、その後大成功を収めたということからです。


 で、スピットファイアに興味を持ったので、第二次世界大戦ブックスの『スピットファイア』を購入して読んでみました。




 P33に「スピットファイア」には「がみがみ女、怒った猫、火吹きだるまなどの意味がある」と書かれていましたが、英辞郎で引いてみると「火を吐くもの、かんしゃく持ち、短気者、ガミガミ女」とありました。『第二次世界大戦の「軍用機」がよくわかる本』のP42によると、

Spitfireとは字義通りなら「火を吐くもの」を意味するが、転じて「鉄火女(気性の激しい女性)」を指し、紳士の国イギリスでは品のよい言葉ではない。



 スピットファイアに初めて乗ったパイロットたちの感想が印象的でした。

 はじめて“スピット”(かれらはすぐこの愛称をつかようになった)にのってみて、おおくのものは息もできないくらい興奮した。かつてテスト・パイロットのJ・サマーズは試作機にのって狂喜したが、こんどは空軍のパイロットたちが1型に感激する番だった。それは駄馬にのったあとに、競馬のサラブレッドにのるようなものであった。
 強力な発動機はたのもしく、しかも操縦装置は安定していて、敏感にはたらいた。巡航速度の水平飛行では、手ばなし飛行ができるくらいであった。そして、かりに発動機がとまっても、飛行場のちかくなら滑空でゆうゆうと着陸ができるくらい、機体全体のバランスがよくとれていたのである。
『スピットファイア』P44



 あと、P217にフランスのエースパイロットであるピエール・クロステルマン(『ストライクウィッチーズ』のペリーヌ・クロステルマンのモデル)が、「スピットファイアで飛んだパイロットが他の飛行機に乗り換えると、慣れるのが極めて難しいという印象を与えた」、つまりスピットファイアは非常に乗りやすかったという風に言っていたというのも。

 スピットファイアは機体が小柄で翼も非常に薄かったのに丈夫で、胴体着陸しても安全であったらしく、しかしそれにも関わらずどんどん改良していける余地があって、OCSでもユニット化されている主な型としてI型、V型、IX型、XIV型があったようです。

 以下、OCSでスピットファイアが入っているゲームのユニットを挙げていってみます。数値は「空戦力-爆撃力」で、空戦力が括弧付きなのは防御だけはできるが自分から空戦を仕掛けることはできないもの。


 ↓『The Blitzkrieg Legend』のイギリス軍航空ユニット(全部)。

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 スピットファイアI型で、この頃は4-1という能力値になってます。左下の赤いユニットはオランダ空軍ユニット。




 ↓『DAK-II』のイギリス空軍ユニットの一部(戦闘機は全部)。

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 スピットファイアVb型となっていて、ここから5-1に。「b」が付くのはこのゲームだけです。




 ↓『Tunisia II』のイギリス空軍ユニット(一部)。

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 最初からチュニス方面に出てくるのはこれだけです。他に、モントゴメリーの第8軍のイギリス空軍もあり、ユニットの能力値は同じですがこちらのみヒップシュートができるという優秀さ。




 ↓『Tunisia II』のアメリカ空軍(一部)。

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 アメリカ空軍にもスピットファイアが供給されている(というか、そもそも様々な国籍の軍隊にスピットファイアは供給されていた)のですが、練度が低いためかこちらは4-1となっています。




 ↓『Sicily II』連合軍航空ユニット(一部)。

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 こちらも英米両軍にスピットファイアがいますが、両方とも5-1となっています。アメリカ軍の練度が上がった!?




 ↓『Beyond the Rhine』のイギリス空軍(一部)。

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 IX型が5-2で、XIV型が6-2に!

 アメリカ空軍にはスピットファイアはいなくなり、しかしP-47が5-8、P-51が6-4となっています。スピットファイアXIV型は最強マスタングと同じ強さなわけですね。

 ただしドイツ軍側には、7-2のMe.262がおり、Fw-190dの一部(全部ではない)が6-2となっています。





 ↓1/144のスピットファイアXIV型。

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 1/144のヨーロッパ戦線の戦闘機を新たに購入しました (2018/04/06)で書いてましたスピットファイアを組み立ててみました。

 本当ならV型が欲しかったところですが、このXIV型しか店に見当たらなかったので。V型がプロペラ羽根が3枚(良く見るやつですね)であるのに対し、XIV型は5枚で、イメージが異なるので違和感はあります(^_^; コクピットとプロペラとの間の部分も長くなっているようです。

 ただ、OCS的にはXIV型は6-2なわけで、スピットファイアの中で最強の型だと思えば、嬉しい感じはしますね~。



インド人300万人を死に追いやったチャーチルvs.ウェーヴェル将軍の戦い

 先日、ネットニュースで↓のような記事を読みました。


映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は10億人の人の歴史を踏みにじる
英国で政治家チャーチルを描いた映画がヒットした。だが英国に植民地として支配された歴史を持つインドから見れば、チャーチルは何百万人ものインド人を餓死させた人種差別主義者とうつるのだ。


 記事の中には、「チャーチルはインド人にとってのヒトラーだ」というような表現も出てきました。

 1943年のベンガル地方(現在のバングラデシュを含むインド東部)で起こった「ベンガル飢饉」で、総数300万人が亡くなったことは、以前読んだ『戦争と飢餓』で知り、印象にも残っていたのですが、再度読み直してみました。


 ↓過去のエントリ
『戦争と飢餓』、超絶オススメです! (2016/02/29)


 飢饉の原因ですが、イギリス人によるインド総督府が無能だった(同時期にイギリス支配下の中東では有能なイギリス人や組織によって飢饉が未然に防がれていた)ことが一つの原因で、もう一つの原因はチャーチルや他のイギリス人達による人種的偏見だと考えられるようです。人種的偏見に関して、引用してみますと……。

 戦争が「食糧の世界経済の複雑な構造を混乱させて」【大英】帝国の一部地域に飢えをもたらすことは「目に見えていた」。そして、その飢えに襲われる地域を決定づけた指針は人種的偏見である、という結論以外は考えにくい。チャーチルはもともとインド人に嫌悪を覚えていたが、恩知らずの裏切り行為とみなした「インドを立ち去れ」運動【クイット・インディア運動】がその嫌悪感を煽り、どこに資源を運ぶべきか決めるにあたってインドの優先順位を最下位におくことになった。チャーチルとその戦時内閣は、インドの食糧不足の深刻さをかたくなに信じないことで、帝国内で民間人が最大の犠牲を払う場所を決定し、飢えをこの植民地に押しつけた。
『戦争と飢餓』P154





 この状況に対して行動したのが、北アフリカでイタリア軍やロンメルと戦っていたウェーヴェル将軍であったということに今回の再読で気付き、大いに興味を持ちました。


General Archibald Wavell
 ↑ウェーヴェル将軍(Wikipediaから)


 北アフリカ戦の資料を収集していてようやくイギリス軍やイタリア軍の将軍の区別がある程度つくようになってきたんですが、とりあえず北アフリカの戦いのイギリス軍の指揮官は大略以下のようになってます。

ウェーヴェル将軍……コンパス作戦、ブレヴィティ作戦、バトルアクス作戦
オーキンレック将軍……クルセイダー作戦、ガザラの戦い、第1次エル・アラメインの戦い
モントゴメリー将軍……第2次エル・アラメインの戦い以後


 ウェーヴェル将軍についてはまた詳しく書きたいと思ってますが、とりあえず私の集めた資料ではWikipedia上の評価よりもだいぶ高い評価で、ロンメルなどはウェーヴェルを最も高く評価していたそうですが、逆にチャーチルはウェーヴェル将軍を「平均的な大佐程度の能力しかない」と偏見の目で見ていたそうです。

 ウェーヴェル将軍はバトルアクス作戦に敗れてチャーチルによって更迭され、対日本軍作戦を指揮することになるのですが、この時期の日本軍は破竹の進撃の時期で何もできずに敗北し、その後ウェーヴェルはインド総督となりました(のちに、更迭されたオーキンレックの方もインドに赴任します)。

 1943年9月にウェーヴェル子爵が総督に就任してはじめて、断固たる行動がとられた。……ビルマ奪還の任務につく兵士もまた、その60%がインド人だったこともあって、飢饉の影響を受けていた。ベンガル出身の兵士は家族から悲惨な手紙を受けとっていたし、たとえ、飢えたベンガル人に見せびらかすように列車の窓からベーコンを数枚ぶらさげる英国兵が目撃されたとはいえ、イギリス人にしろインド人にしろ、兵士の多くは飢饉の犠牲者の姿にひどく心を痛め、自分たちの配給を物乞いたちに食べさせていたという。
 ウェーヴェルに動員された軍隊が、農村地域まで米の運搬を警護し、衣服を配り、救援物資の穀物になじみがない村人たちに調理法を実演してみせた。ずたずたになった輸送体系の復旧にも取り組み、「阻止作戦」で撤去した船を戻して、橋を修繕し、渡し船の運航を再開した。……
 ……ウェーヴェルは再三にわたってロンドンに電報を送り、インドに食糧を送るよう懇願した。チャーチルはこれに腹をたて、インドでそれほど食糧が不足しているなら、なぜガンジーはまだ死んでいないのか、と返事をよこした。
 ……偏見と嫌悪から、チャーチルはかたくなにインドに救いの手を差し伸べようとしなかった。
 ……
 困り果てたウェーヴェル総督は、クロード・オーキンレック、ルイス・マウントバッテンのふたりに狙いを移した。前者はインド軍の最高司令官、後者は連合軍の東南アジア最高司令官だ。ふたりが軍需物資を10%削減してもいいと認めてくれた結果、ロンドンの参謀本部長も軍用の船舶25隻を転用することを承知し、内閣に20万トンの穀物を輸送することを認めさせた。ところが、不運にも1944年は不作の予想となり、ウェーヴェルはその後もインドに食糧を送ってほしいと訴えつづけ、イギリスの内閣を「目先の利益しか頭になく、冷淡」だと断じた。あからさまな嫌悪にもイギリス政府は動じなかったが、ついに1944年末にインド軍が士気を喪失する恐れが生じたため、軍需物資の補給に代えてオーストラリアの小麦2万トンが運ばれることとなった。1945年3月、大量の物資がオランダへ空輸されたことを聞いたとき、ウェーヴェルは苦々しげにこう述べた。「同じ飢餓でもヨーロッパで生じた場合は、飢えた人々に食糧を与える姿勢がまるきりちがう」。
『戦争と飢餓』P150~153




 ただ、日本版Wkipedia(というか、その出典であるジャン・モリス『帝国の落日 下巻』)によると、ウェーヴェルは「ガンジーのことはかなり軽蔑しており、「あのじいさん」と呼んでいた。」そうですが(^_^;

インド統治においてはインド・パキスタンへの権力移譲の土台を築いた人物である。ウェーヴェルは「我々はインドに自由を与えるかのように言いながら、実際面では一歩前進するための提言にひとつ残らず反対している」と自国のインド政策を批判していた。ただ、ネルーやガンジーなどインド独立運動指導層との関係は良くなかった[32]。
アーチボルド・ウェーヴェル (初代ウェーヴェル伯爵)




 あと、当時のイギリス人が日本人のことも人間と思ってなかったことについて、『アーロン収容所』という本がオススメです。




 尤も、当時の日本人にしろ、今の日本人にしろ、人種差別的偏見がないわけではなく……(まったく偏見がないのが普通だと考えるのもおかしい、という考え方もありますかね)。

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プロフィール

DSSSM(松浦豊)

Author:DSSSM(松浦豊)
 ゲームをしないウォーゲーマー……でしたが、最近はOCSだけはひたすらプレイしたり情報を集積したりしてます。また、ナポレオン時代のプロイセンと、あと若干イギリス軍関係を調べたり。自宅(尼崎会)でOCSを置きっぱなしプレイがメインになりつつありますが、時々はゲームクラブのミドルアース大阪などに行ったりも。

 尼崎会では、OCSに興味のある方を常時募集しております。OCS初心者の方にも分かりやすい、やりやすいところからお教えいたします! 見学だけ等も大歓迎です。ブログのコメント等で、気軽にご連絡下さい(*^_^*)

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